MIN-IRENトピックス

2018年2月16日

【新連載】45.ST合剤の使用をめぐる問題点

ST合剤スルファメトキサゾールトリメトプリム(商品名:バクタ、バクトラミン)

 抗菌剤のST合剤(Sulfa + Trimethoprim)は、副作用の問題点が多く大量使用による耐性菌が増加しています。そのため、尿路感染とニューモシスチス肺炎の治療で今も抗菌剤として利用されています。
 ST合剤で有名な副作用は皮疹と消化器障害、そして血液障害(造血障害)です。ST合剤はHIV患者におけるニューモシスチス肺炎の発症抑制に定期的に服用されているケースも多いですが、こういった患者さんでは皮疹の発症頻度が高いといわれています。通常、皮膚症状の発現頻度は3~4%と言われており、重症度は軽微なものから重篤なTEN(中毒性表皮壊死症)までそれぞれですが、TENに関する症例報告は本邦でも存在します。
 胃腸障害も発現頻度は高く、3~8%とされています。 主な症状は嘔吐や下痢症状と言われています。
 また薬物相互作用も比較的多いのが特徴です。SU剤(スルホニルウレア系薬)やワルファリン、フェニトイン、ジゴキシンなどハイリスク薬との相互作用が多く注意が必要です。さらに高カリウム血症の副作用があり、スピロノラクトン、レニンアンギオテンシン系薬剤など高カリウム血症を起こす可能性のある薬剤との併用も注意が必要です。
 尿路感染症では、皮疹の発現に留意するとともに高カリウム血症などの副作用防止の観点から原則、膀胱炎にのみ用い、その投与期間を3日とします。
(通常の膀胱炎では3日の投与で十分有効性が期待できる抗菌薬の考え方、使い方 Ver3.0 中外医学社 2012)   

症例)80代後半男性。51kg162cm。パーキンソン症候群、狭心症
 入院8日目、38度の発熱、尿路感染を疑いバクトラミン4錠分2 3日分処方
   検査値CRP1.80 BUN30.7 Scr0.85 K4.6 Na134
 入院10日目解熱したが炎症データ増強、脱水、腎不全進行。さらに1週間投与継続、薬剤師から減量提案あり2錠分2 検査値CRP14.36 BUN35.4 Scr1.41 K4.9 Na134
 入院14日目 高K血症あり、バクトラミン終了。アーガメイト3個/日処方 
  検査値CRP1.86 BUN34.3 Scr1.40 K6.0 Na134
 入院24日目 K値低下、アーガメイト継続のまま退院。

 この症例では、Scr>1.2mg/dlの腎不全で高K血症のリスクが高い症例で投与期間が1週間で高K血症が発現している

 Goodman&Gilman (以下G&G)薬理学書には「急性無併発尿路感染のいくつかの場合には有効であり、最低3日間治療した方が良い」とあり ます。しかし、神戸大学の岩田健太郎教授(医師)は、利益と危険のバランスから、「尿路感染に対して使用する時は3日間」と具体的な日数で紹介しています し、添付文書では、単純性膀胱炎には適応がなく、警告には「血液障害、ショック等の重篤な副作用が起こることがあるので、他剤が無効、または使用できない 場合のみ投与を考慮する」とあります。第一選択として使用すべきではない、ということです。
 当副作用モニターに寄せられた47症例59件のうち、この1年では報告件数が13症例にのぼり、使用頻度が増えているかもしれません。
 皮膚障害は20件(G&G薬理学書では副作用の75%と記述)で、そのうち13件は1~2日目で発症しています。投与初日から厳重な監視が必要です。低 ナトリウム血症および高カリウム血症の電解質異常は12件で、腎機能に注意が必要です。以下、白血球減少4件、血小板減少3件、薬剤熱3件、肝機能障害3 件、INR延長2件、低血糖は3~4日目で2件と続きます。多くは5~14日目の採血で確認されています。岩田教授の指摘通り、3日を超える使用は有害と なる傾向が認められました。ST合剤を投与する患者は、高齢者や様々な既往症が併発しており、発熱症状と合わせて、血小板減少症・白血球減少症・湿疹などが前後して発現している症例やトリメトプリムによる遠位尿細管のNaチャンネル阻害による低Na血症と高K血症や肝機能異常などの副作用のモニタリングが必要です。

 同剤を安全に投与するためには、適応症例を厳選し、投与計画も厳密に管理すべきです。例え ば、尿路感染には反復性症例で3日間のみ使用すること、肺炎には早期から副作用を監視しながら使用することなどです。年齢や腎機能を考慮し、適宜減量も行 います。多人数への使用や投与期間延長などは注意が必要です。副作用の頻度が高いので使用が制限される、という認識でいてください。

(民医連新聞 第1525号 2012年6月4日)

■画像提供 奈良民医連 一般社団法人奈良保健共同企画
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**【薬の副作用から見える医療課題】**

 全日本民医連では、加盟する約650の医療機関や352の保険薬局からのデータ提供等を背景に、医薬品の副作用モニターや新薬評価を行い、およそ40年前から「民医連新聞」紙上(毎月2回)などで内外に情報発信を行っております。

<【薬の副作用から見える医療課題】掲載済み>
  1.民医連の副作用モニターとは~患者に二度と同じ副作用を起こさないために~
  2.アルツハイマー治療薬の注意すべき副作用
  3.味覚異常・聴覚異常に注意すべき薬剤
  4.睡眠剤の注意すべき副作用
  5.抗けいれん薬の注意すべき副作用
  6.非ステロイド鎮痛消炎剤の注意すべき副作用
  7.疼痛管理に使用する薬剤の注意点
  8.抗パーキンソン薬の副作用
  9.抗精神薬などの注意すべき副作用
  10.抗うつ薬の注意すべき副作用
  11.コリン作動性薬剤(副交感神経興奮薬)の副作用
  12.点眼剤の副作用
  13.消化器系薬剤の様々な副作用
  14.ジゴキシン(強心剤)の注意すべき副作用
  15.抗不整脈薬の副作用
  16.降圧剤の副作用の注意点
  17.トリプタン系薬剤(片頭痛治療薬)の副作用について
  18.脂質異常症治療薬の副作用について
  19.喘息及び慢性閉塞性肺疾患治療薬の副作用
  20.潰瘍性大腸炎治療薬の副作用
  21.抗甲状腺ホルモン剤チアマゾールによる顆粒球減少症の重症例
  22.過活動膀胱治療薬の副作用
  23.産婦人科用剤の副作用
  24.輸液の副作用
  25.鉄剤の注意すべき副作用
  26.ヘパリン起因性血小板減少症
  27.高尿酸血症治療薬の注意すべき副作用
  28.糖尿病用薬剤の副作用 その1
  29.糖尿病用薬剤の副作用 その2
  30.糖尿病用薬剤の副作用 その3
  31.抗リウマチ薬「DMARDs」の副作用
  32. ATP注の注意すべき副作用
  33. 抗がん剤の副作用
  34. 医薬品によるアナフィラキシー
  35.重篤な皮膚症状を引き起こす薬剤
  36.投注射部位の炎症等を引き起こす医薬品について
  37.間質性肺炎を引き起こす薬剤(漢方薬を除く)
  38.漢方薬の副作用
  39.抗生物質による副作用のまとめ
  40.抗結核治療剤の副作用
  41.抗インフルエンザ薬の副作用
  42.ニューキノロン系抗菌薬の副作用
  43.水痘ヘルペスウイルス・帯状疱疹ウイルス治療剤の副作用
  44.薬剤性肝障害の鑑別

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