くすりの話

2018年4月3日

副作用モニター情報〈492〉 H.pylori除菌療法による強直性けいれん

 H.pylori(ヘリコバクター・ピロリ)除菌において過敏症などの理由でアモキシシリンを使えない場合、日本ヘリコバクター学会(以下、学会)は代替薬としてミノサイクリン(MINO)を組み込んだ「プロトンポンプインヒビター1日2回+MINO100mg1日2回+メトロニダゾール(MNZ)250mg1日2回」を推奨する処方のひとつに挙げています。ただし保険適用外です。2018年1月16日までに集約した当モニターへの報告の中で、この処方にならって除菌療法を行い、強直性けいれんが起きた症例がありました。
 この症例は、MINO250mg1日2回合計500mg/日で治療を行っていました。これは添付文書上の「1日最大量200mg」を超える量です。添付文書に副作用としてけいれんが記載されているMINOが原因の可能性が高いですが、併用のMNZもけいれんを起こす可能性があるため、被疑薬はMINO単独ではありません。
 問題は、なぜMINOをこの投与量にしたのか、です。報告事業所に確認したところ、学会ホームページから閲覧できる「H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版に関するご意見と回答(パブリックコメント)」に「MINO250mg1日2回」とあった学会側の回答を参考にした、とのことでした。確かにその通り記載されており、「『MINO100mg』の間違いではないか」と学会に問い合わせたところ、すぐにこの部分が訂正され「2016改訂版の記述のとおり『MINO100mg』が正しい」と返答がきました。
 保険適用外で薬物療法を行う場合は、詳細に調査し、通常量から著しく逸脱した処方については原著を見るなど、信ぴょう性を必ず確認しなければなりません。同時に、患者さんには安全性が確保できないことについて同意を得ておかねばなりません。学会が情報源とはいえ、インターネット上にある情報は必ずしも正しいとは限らないので、批判的に検証し、適用する必要があります。

(民医連新聞 第1665号 2018年4月2日)

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