MIN-IRENトピックス

2018年8月31日

けんこう教室 腰痛

沖縄協同病院 上原健

沖縄協同病院
上原健

 日本人の8割が一生のうちに一度は腰痛を経験すると言われています。厚生労働省の国民生活基礎調査の概況(2016年)によると、腰痛の自覚症状がある人の割合は、男性で9・2%、女性では11・6%にのぼります。
 腰痛の原因となる疾患は、脊椎からくるもの(脊椎由来)のほか、神経、内臓、血管、心因性などさまざまです(表1)。受診してさまざまな検査を行ってみたものの、明らかな異常は見られない人が多くいます。原因が明らかにならない「非特異的腰痛」と呼ばれ、実は8割以上の人がこれに当てはまります。
 非特異的腰痛に対しては、鎮痛薬の使用や安静、運動療法、理学療法などで経過を見ていくことで、多くの人は良くなっていきます。
しかし、中には重大な疾患が腰痛の原因になっている場合があります。「レッドフラッグ」(危険信号)と呼ばれる症状に注意が必要です(表2)。体重減少や発熱をともなう場合、時間や活動性に関わりなく常に痛む場合は、必ず受診してください。

表1

表2

背骨のしくみ

 腰痛の原因を探るために、身体の仕組みを解説しましょう。私たちの体を支えている背骨は、1つ1つの椎骨が積み重なってできており、頭のほうから順番に頚椎、胸椎、腰椎、仙骨と呼ばれます(図1)。
 椎骨は腹側の椎体と背側の椎弓から成り、その間の空間(脊柱管)に脊髄が通っています。椎骨と椎骨の間には、椎間板と椎間関節があり、椎間板は衝撃を和らげるクッションの役割、椎間関節は椎骨をつなぐ役割を果たしています(図2)。
 腰椎の下には仙骨があり、骨盤の中央にあって背骨を下から支えます。仙骨は外側にある腸骨(お尻の内側の骨)と仙腸関節でつながっています(図3)。

図1

図2

図3

セルフチェック

 自分の腰の痛みはどこから来ているのか、ある程度自分で知ることができます。医師に症状を伝える際の参考にしてください。
 人差し指を立て、現在痛む腰の部分を指差します。指で示した位置を特定することによって、椎間板、椎間関節、仙腸関節のどこからくる痛みなのかおおよそ判断できます。指差した位置が尾てい骨の斜め上あたりの場合は、仙腸関節の部分に痛みがあると推測できます(図4)。
 次に立った状態で前かがみになったり、後ろにそらしたりします。椎間板は腹側にあるため、前屈して痛みが出るようであれば椎間板の痛みと予想できます。椎間関節は背中側にあるため、後ろにそらして痛みが出れば椎間関節の痛みと予想できます(図5)。

図4

図5

治療

 原因が分かる腰痛に関しては、薬物療法や運動療法、徒手療法(マッサージ・指圧など)、場合によっては手術による治療を行います。原因が分からない非特異的腰痛に関しては、鎮痛薬の内服、貼付剤の使用といった対症療法を中心に疼痛をコントロールします。
 痛みが強いときは安静にすることも必要ですが、無理のない範囲で日常生活は続けたほうが早く良くなると言われています。コルセットやベルトの一時的な使用が必要になる場合もあります。ある程度落ち着いてきたところで、ウオーキングなどの適度な運動も取り入れていきます。

予防

 治療によって椎間板や椎間関節はある程度修復されるものの、再度痛めて症状が出やすい状態になっています。腰痛の原因として腰椎を支える筋肉が弱っており、椎間板や椎間関節に直接負担がかかる状態となっているからです。
 腰痛の再発を防いだり、腰痛そのものを予防するには、腰椎を支える筋肉を鍛えることが必要です。
 腰椎を支える筋肉は腹横筋や多裂筋など身体の深部にある筋肉、いわゆる「体幹」と呼ばれるものです(図6)。
 腹横筋を鍛える運動「ドローイン」を紹介します。これはお腹をへこませる運動として聞いたことがあるかもしれません。多裂筋を鍛える「ハンドニー」もあわせて紹介します。腰痛を予防するためにも、筋肉による自前のコルセットをつくりましょう(図7)。

図6

図7

拡大図はこちら

いつでも元気 2018.9 No.323

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ