副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2018年10月2日

副作用モニター情報〈504〉 GLP-1製剤による味覚異常

 食事をすると小腸から消化管ホルモンが分泌されますが、この消化管ホルモンの中で膵臓に働きかけてインスリン分泌を促すものを「インクレチン」と呼びます。GLP-1製剤はこの「インクレチン」の一つであるGLP-1を製剤化したもので、従来の糖尿病治療薬と異なる作用をもつ薬剤として開発されました。
 GLP-1製剤である「トルリシティ皮下注0.75mgアテオス」を使用した患者で味覚異常の報告があったので紹介します。
症例) 70代後半女性。高血圧、脂質異常症、慢性胃炎、胆石症、白内障。併用薬:カンデサルタン、アスピリン、ランソプラゾール、アムロジピン、メトグルコ、ベザフィブラート
 HbA1c8%台で推移。年齢からは厳格なコントロールは不要だが、ADL良好のため合併症増悪防止の目的でトルリシティ注を追加、治療強化した。投与28日後に患者から「味覚が変わり甘味を強く感じる。食事がおいしくない」と訴えがあり、トルリシティ注は中止となった。中止後1カ月以内に症状は回復し、食事もおいしく食べられるようになっている。

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 「味覚異常」はGLP-1製剤に共通した副作用です。発症の原因ははっきりとはわかっていませんが、九州大学の高井氏らの研究によると「一部の甘味に応答する細胞はGLP-1を分泌していることがわかった。末梢味覚器においてGLP-1を介した味覚情報伝達機構が存在している可能性がある(一部抜粋)」と報告しています。
 GLP-1製剤に限らず、ホルモン製剤が複数の臓器や器官に目的とは異なる作用を引き起こし、これが副作用という形で現れることがあります。こういった副作用は発売後ある程度時間が経過し、症例数が集まるなかで発覚することが多く、それまでは副作用と認知されず放置されることがあります。薬剤変更・追加後の患者の変化に注目し、常に薬による影響を考慮することが大切です。

(民医連新聞 第1677号 2018年10月1日)

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