くすりの話

2018年11月30日

くすりの話 
下痢止め

執筆/川高 舞子(石川・城北病院・薬剤師)
監修/高田 満雄(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 きゅーっと差し込むお腹の痛みに冷や汗、今すぐにでもトイレに駆け込みたい! 突然起きた下痢の症状に耐えた経験が誰しもあると思います。市販の下痢止めを手にしたことがある人も、多いのではないでしょうか。
 私たちの口から入った食べ物は、胃や小腸で消化・吸収されて、長さ約1.5mの大腸へ運ばれます。大腸では内容物の水分が吸収され、徐々に硬くなって大便になります。大腸は同時に、内容物をスムーズに運ぶために粘膜から水分を分泌しています。大腸における水分の吸収と分泌のバランスが崩れることによって、下痢が起こります。

下痢の種類

 下痢には原因別にいくつかの種類があります。感染症による下痢は、菌やウイルスに汚染された食べ物を食べることによって、消化器官で増殖した病原菌が腸を刺激することで起こります。食べ過ぎ・飲み過ぎにより大腸で十分に水分を吸収されないまま排出されるために起こる下痢や、抗生物質などの薬剤によって腸内環境が変化して起こる下痢もあります。
 ストレスやお腹の冷えによる自律神経の乱れも腸の働きに影響を与え、下痢を起こします。女性の場合、生理前は子宮を収縮させる「プロスタグランディン」というホルモンの分泌により、腸が異常収縮して下痢が起こりやすくなります。

感染症は要注意

 下痢が2~3日ほど続いたら、市販の下痢止めを使用したほうが良い場合もあるでしょう。しかし、感染症による下痢には下痢止めを使用してはいけません。体の中にいる菌やウイルスを下痢によって排出しようとしている状態ですので、無理矢理止めないようにしましょう。
 腸のぜん動運動を止める即効成分が入っている「ストッパ」「トメダインコーワ」「ビオフェルミン下痢止め」などは、感染症が疑われる時には使用を控えてください。一方で「新ビオフェルミンS」など、腸内環境を整える薬は使用可能です。判断に迷ったり、心配な場合はお近くの薬剤師にお尋ねください。

ためらわずに受診を

 どんな下痢でも脱水症状には注意が必要です。十分な水分補給を心がけてください。また、高熱や血便などの症状を伴う場合は、無理せずに医療機関を受診してください。
 3週間以上続く慢性的な下痢は、他の病気が潜んでいる可能性もあります。市販の下痢止めを自己判断で長く続けるのは良くありません。ためらわずに医療機関を受診して、正しくお薬を使用しましょう。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2018.12 No.326

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