MIN-IRENトピックス

2019年1月8日

“人間の復興”にはほど遠い 住宅再建支援は500万円に引き上げを

 地震や豪雨による災害が各地で頻発しています。被災者の生活再建は長期にわたり、自力での再建が難しい人たちが取り残されています。今後も大きな災害が予想されているにもかかわらず、国は「個人補償はしない」という姿勢を崩していません。住宅再建支援の対象は全壊と大規模半壊に限られ、上限は300万円のまま。医療費減免などの各種支援制度も自治体によって違うなど、課題は山積みです。(丸山聡子記者)

 1995年に阪神・淡路大震災が起きた当時、被災者の生活再建を支援する制度はありませんでした。公的補償を求める被災者の運動で、98年には被災者生活再建支援法を誕生させました。支援額の上限は300万円。対象は全壊と大規模半壊に限られ、再建に十分とは言えません。民医連も加わる全国災対連は、住宅再建支援金の500万円への引き上げなどを求める署名にとりくんでいます。
 被災からまもなく8年を迎える東日本大震災では、今も5万6000人が避難生活をしています。2011年から5年間で25兆円の復興予算が投入されましたが、被災者への直接支援はわずか2兆1000億円で、全体の8%強に過ぎません。
 地震から2年半経つ熊本でも、3万8000人が仮設住宅で暮らしています。昨年の豪雨災害で甚大な被害を受けた広島・坂町小屋浦地区でも、「仮住まいは2年で出ないといけない」「業者も資材も不足して改修のめどが立たない」などの声が寄せられています。

■“暮らしの再建”が欠如

 救助や支援の根拠となるのは災害救助法です。しかし、防災対策の専門家である中村八郎さんは、「同法が規定する救助措置は全て1カ月以内と規定されており、そもそも応急救助への対応でしかなく、被災者の生活再建や防災のためには全く足りない」と指摘。恒久的支援は生活再建支援法などの個別法で対応しますが、近年の災害は被害が大規模になる傾向があり、仮設住宅の建設などの応急的措置ですら1カ月以内では終わらず、被災者は疲弊し、自治体も手が回らない状態です。
 東日本大震災では、国による医療費免除制度が被災2年後の13年に打ち切られ、同じ被災地でも岩手県は継続、宮城県では打ち切りとなっています。熊本でも昨年9月に医療費免除は打ち切られました。仮設自治会長らが呼びかけ人になって復活を求める署名を提出しましたが、県議会で否決されています。

■住民の声に耳傾けて

 岩手県は医療費と介護保険利用料の免除制度を続けています。達増(たっそ)拓也知事は19年の継続を表明。県保険医協会が2000人以上に聞き取りをした調査では、医療費負担が発生した場合、「通院回数を減らす」(39・1%)、「通院できない」(18・3%)で、医療費免除の必要性が明らかになっています。日本共産党の斉藤信県議は、「被災者の切実な声と運動に押され、県議会でも超党派で合意を作れている」と話しています。


町独自の施策で支援

■岩手・陸前高田市民生部長 菅野利尚さんの話 震災と津波で、市の中心部がもっとも大きな被害を受けました。庁舎も被災し機能せず、中堅職員の多くが犠牲となり、住民情報も津波で流されました。しかし住民への個別の給付は早急に必要で、支援のとりくみは困難を極めました。
 被災者生活再建支援法での支援金は上限300万円ですが、これでは見舞金程度。国は「個人補償はしない」という立場ですが、家が全壊した住民に安心して住み続けてもらうために、市で上乗せし500万円としました。
 岩手県で続けている医療費免除の市の負担分は、免除総額の10分の1。被災すれば医療費に困るためにある制度ですが、数年後には、継続か否かの議論になりました。住民の状況や家族構成などを知っている私たちから見れば、実際に困っている人がいるわけですから、やはり医療費免除は継続すべきです。

(民医連新聞 第1683号 2019年1月7日)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ