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2019年1月8日
病児保育から見る貧困 子どもも親も安心できる場所に 大阪 西成民主診療所併設 病児保育室「まつぼっくり」
働く親は増えています。しかし、貧困と格差が広がる中、非正規雇用も多く、子どもが体調を崩しても休みにくい現状があります。そんな親と子をささえたいと、大阪きづがわ医療生協・西成民主診療所では、病児保育室「まつぼっくり」を運営しています。
(丸山いぶき記者)
病児保育は、「子どもが熱を出し保育所に預けられない」「仕事を休めない」など、子どもの病気で困った時に利用できる保育施設です。
昨年11月5日、病児保育室「まつぼっくり」では、1~7歳の子どもたち4人が過ごしていました。そのうち1人は水疱瘡で、1日専任の保育士とともに隔離室に入室。この日は早番と遅番を合わせて4人の職員が子どもたちを見守りました。
■他職種や地域がささえ
利用初日は、西成民主診療所で診察を受け、2日目以降は直接「まつぼっくり」に来所。午後には小児科医が回診し、大里光伸所長も毎日顔を出します。
保育士が病状にあわせて保育看護を行いながら健康をチェック。薬を飲ませ、病状に変化があれば診察につなげます。昼食は厨房がデイケアの食事とともに「まつぼっくり」の分も担当。子どもの年齢や病状に合わせてメニューを相談し調理します。
2009年開設の「まつぼっくり」の土地は、地域に役立てて、と組合員から遺贈されました。正職員2人とパート職員5人が勤務。最大9人を受け入れ可能で、一人ひとりに寄り添えるようにと4~5人体制にしています。月1回の診療所との連携会議では、気になる利用者の情報も共有します。
年に2回は小児科医などを講師に、保育士や保護者に役立つ学習会を開催。病気のとき以外もつながれるように、クリスマス会やもちつき、健康まつりで子どもコーナーをつくるなど、イベントも行っています。
■保護者の不安に心寄せて
開設時から利用するAさんは「まつぼっくりは子育てや生活相談にも乗ってくれる」と顔をほころばせます。Aさん自身が障害を抱え2児を子育て中。対象年齢が拡大し、長女は「6年生まで行けるようになってうれしい」と喜びます。
「病気のときくらい側にいてあげたいと罪悪感もある」と話すのはBさん。シングルマザーの友人の紹介で利用し始めました。人手不足の福祉現場で働くBさんは、「お迎えの時に一日の様子を伝えてくれるから、子どもが楽しく過ごせたのがわかりホッとする」と話しました。
保育士の前田梨少子さんは、「気兼ねなく仕事を休める社会になってほしいけれど、今それが難しいなら、家庭の事情に合わせてささえたい」と話します。入職2年目の山口春奈さんも、「お母さんがどんなことを不安に思っているのか、ていねいに聞くよう心がけています」。
■子どもの病気時の選択肢に
「まつぼっくり」の年間のべ利用件数は1200超で、16年度は35%が非課税世帯、6・6%が生活保護利用世帯、30%がひとり親家庭。前田さんは「大阪市内の他の施設に比べ、高い印象がある」と言います。
15年、大阪市は病児保育の利用料を値上げ。しかし「まつぼっくり」では、負担を増やしたくないと、給食費などの諸経費を無料にしました。「保護者に寄り添うことで、子どもの貧困問題が身近になりました」と前田さん。ある事例では、区役所や子ども相談センター、弁護士事務所にも同行しました。
子どもが病気の時、「仕事を休む」「祖父母に預ける」と同列に、「病児保育に預ける」を身近な選択肢にしてもらいたいと、保育士たちは地域の保育所や児童施設を回り、病児保育を紹介しています。開設当初から積極的に地域とつながることで「まつぼっくり」の認知度は上がり、区役所や保育所からの紹介事例も増えました。大里所長は「民医連で病児保育の集いができるようになってほしい。預けざるを得ない保護者の葛藤への理解も含めて、広がりを期待しています」と語りました。
(民医連新聞 第1683号 2019年1月7日)
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