MIN-IRENトピックス

2019年1月8日

気になるお客さん相談会 SDHの視点を生かした実践 24時間スパ利用客の思いをキャッチ 山梨 石和共立病院

 山梨・石和共立病院の健康友の会は、2017年12月から月に1度、24時間営業のスパ施設で健康相談会を行っています。相談会のきっかけになったのは、研修医の地域レポートでした。とりくみにかかわった甲府共立病院の2年目研修医や相談会に参加する石和共立病院の職員に話を聞きました。

(代田夏未記者)

 山梨の石和町は温泉施設が多くあります。その中にある「スパランド ホテル内藤」で月に1度、健康相談会を行っています。2017年の12月から始まり、現在までに166人のお客さんが相談会に来ました。

■気に客はいる?!

 相談会を始めたきっかけは研修医の地域レポートでした。山梨民医連では1年目の医師が地域にかかわるレポートを発表。2017年はSDHの視点を取り入れたものとして、内容を決めていきました。
 大坪優太医師、塩江理沙医師、若松宏実医師は「気に客(気になるお客さん)は存在するのか? 24時間営業施設に対するアプローチ」と題して報告しました。「24時間営業のスパ施設で倒れ、救急搬送された患者さんが、7年間スパで生活をしていた背景があったことを聞き、調査することにした」と若松さんはきっかけを話しました。近くにある3つの24時間営業のスパ施設で働くスタッフに直接インタビューして調査を行いました。
 「気になるお客さんはいますか?」の質問にA施設では、「どこの施設にもいると思う」という回答が。B施設では、「少なくなっているがまだいる」という回答でした。共通していたことは、「気に客に話しかけたことはありますか?」の質問に「お客さんから話しかけてくることも多い」という回答でした。
 「C施設では協力を得ることができなかったので、潜入捜査をした」と若松さん。捜査員のひとり、大坪さんは「とても寝られず」と夜中に帰りました。夜でも数十人ほどが利用しており、中には親子連れも。1人分のスペースが小さく、プライバシーもないため、心身ともに健康を保てる空間ではありませんでした。若松さんたちは、「健康を損なう前に、早期介入ができないか」と考えました。

■安心感を求めて

 医師たちの報告を聞いた、石和共立病院・前事務長の池田誠さんは、対象となったすべての施設が石和にあること、友の会の委員会で討論していたアウトリーチの問題と重なり、健康相談会をやってみようと各施設に相談にいきました。
 そして、「スパランド ホテル内藤」で健康相談会が実現。友の会役員や看護師、事務など多職種で相談会を開催。チェック表を用意し、体重、体脂肪、BMI、血圧チェックを行い、最後に相談。女性には、モデルを使っての乳がんチェックが人気です。
 「お客さん同士で、会話をすることが安心感につながるのでは」と職員の斉藤敦子さん。相談に来てくれる人の中には施設で生活している人もいました。「館内は暖かいし、館内着もあって、ここは楽だと言う人もいました。しかし、ここが生活の場とならざるを得ない状況や、本当に困っていることが、背景にあるのかも…」と職員の中村孝二さんは考えます。

■経験して感じてほしい

 同施設支配人の戸島哲也さんは、相談会を開きたいと話があったとき「先生たちのインタビューが心に残っていた。自分の健康により関心を持ってもらいたいと思っていたことが相談会として形になるのではと思い、了解しました。施設で生活しているお客さんはいるけれど踏み込みにくい」と胸の内を語りました。
 初めて相談会に参加した1年目の看護師の池谷結花(ゆうか)さんは「看護師は患者さんを病院で診る人だと思っていたけれど、病院に来られない人もいる。これをきっかけに受診してくれたらうれしい」と話しました。池田さんは「職員も外との接点を持つことは視野を広げる意味で大切」と職員の成長にもつながっていると考えます。

* * *

 自分たちの報告から、石和共立病院が健康相談会を始めたことについて、「アンテナの高さに感銘を受けた。このまま報告だけで終わっていいのかと思っていたので、相談につながってよかった」と若松さん。今後について「何より継続が大切。ほかにも、24時間営業のネットカフェや飲食店にも視野を広げたい」など話しました。「民医連の職員には、24時間営業の施設を体験してもらい、いっしょに地域の実状をキャッチしていきたい」と提案もありました。

(民医連新聞 第1683号 2019年1月7日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ