副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2019年3月5日

副作用モニター情報〈512〉 抗インフルエンザ剤バロキサビル(ゾフルーザ)と凝固能異常~ワルファリンとの併用を避けよ~

 この副作用モニター情報507回(本紙2018年11月19日付に掲載)で指摘したゾフルーザとワルファリンの相互作用への懸念が現実となってしまいました。
症例1) 80歳代前半、女性。体重
47kg、身長150cm。基礎疾患は心不全、アルツハイマー型認知症など。ワルファリン1mg、葉酸5mg、ランソプラゾール10mgを服用中。
 発熱翌日、往診でインフルエンザAの診断、ゾフルーザ40mgを服用。
服用1日後:食事摂取困難のため補液1000mL、アセトアミノフェン錠200mg/発熱時、ミノサイクリン100mgを1日2回で開始。
服用2日後:解熱、回復。
服用6日後:淡血性尿を確認。
服用8日後:血尿が徐々に悪化、ワルファリン中止。
服用9日後:病院に救急搬送。PT=83.8秒、INR=8.06、APTT=88.3秒、尿沈渣赤血球≧100/HF。血清アルブミン値2.5g/dLと低値。肝機能、腎機能には問題なし。ミノサイクリン中止。ビタミンK110mg×2を静脈内投与。
服用10日後:PT、INR、APTT測定不能。血清フィブリノーゲン486mg/dL。ビタミンK110mg×2を静脈内投与したが無効、ビタミンK依存性凝固因子以外の障害を懸念し、新鮮凍結血漿5単位を投与。
服用11日後:INR=1.13、APTT=34.8秒、と回復。
 新鮮凍結血漿投与前の凝固因子活性はATIII=75%、第V因子=100%、第X因子=37%、第XIII因子=86%で、第X因子の活性だけが顕著に低下していた。

* * *

 第X因子活性の大幅な低下の原因として、低アルブミン値から推定される栄養状態の不良、食事摂取困難、ミノサイクリン内服などの影響は否定できませんが、ゾフルーザを投与した絶食ラットでPT延長(ビタミンK投与例はPT延長なし)が確認されていることから、ワルファリンとゾフルーザの相互作用が最も疑わしいです。ただ、本症例が示すように、ヒトの場合はビタミンK1を40mgも投与して無効だったことから、Xa阻害剤服用者も含めた抗凝固剤の服用者に対して、ゾフルーザを服用した場合の出血傾向増大への警戒が必要でしょう。

(民医連新聞 第1687号 2019年3月4日)

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