民医連新聞

2019年7月2日

いのち切り詰め そして孤立・・・ 医療費窓口負担免除で生活再建を

「相談相手いない」23% 生活困窮が孤立深める 宮城

 東日本大震災から8年。宮城県の災害公営住宅では、今もなお不安の声が広がっています。上がっていく家賃、交通や健康の問題…。宮城民医連は昨年も災害公営住宅に居住している人たちの健康や生活の状況を把握し、支援活動に生かすため、訪問調査を行いました。(代田夏未記者)

 宮城民医連は、2015年の仮設住宅訪問調査を皮切りに、毎年災害公営住宅訪問調査を行っています。4回目の今回は、2018年10月20~27日のうち4日間で2503軒を訪問し、407人と対話しました。後日郵送分も含めて622枚の調査票を回収しました。「震災から8年。しかし、調査結果に大きな改善はみられない」と調査を行った坂総合病院の矢崎とも子医師は言います。

■近所付き合いが希薄に

 回答者の52%が70代以上で75%が独居か2人暮らしの世帯でした。独居で近くに家族や親戚がいない人も20%いました。コミュニティーを考慮しない抽選入居のため、今まで近所の人たちのささえで生活できていた人は、隣人とのつながりがなくなり孤立してしまうケースがあります。「困ったときに相談相手がいない」と答えた人が23%。経済的負担感の強い人ほど近所付き合いがない、という結果もでています。
 「仮設住宅より広くなったが玄関まで行くことが大変」「高層化で風が強く1階まで降りるのが大変」と、足が悪い人は外に出なくなっています。密閉度が高く、ドアも重いため「独房のようだ」という人もいます。「仮設よりはいい」という声の中にも「仮設の方が、ドアを開ければ誰かがいるとわかって安心できた」という人もいました。見た目はきれいで防音もしっかりしているけれど、隣人とのコミュニケーションは遮断されていました。
 また、健康面で不安を抱えている人が52%。経済的理由で受診を控えた人は22%いました(図1)。特に70歳未満では30%の人が受診を控えており、これは窓口負担が高いためと考えられます。ほかにも、薬代や交通費の負担が大きいと回答がありました。
 医療費窓口負担免除を求める人は65%と半数以上(図2)。窓口負担免除がなくなり「病院に行けなくなった」「多少具合が悪くても我慢する」という声があります。しかし「いつまでも免除を受けるのは申し訳ない」と本心を出せない人もいます。

■上がり続ける家賃

 今回目立ったのが家賃問題。災害公営住宅の家賃軽減措置は5年で、それ以降は段階的に家賃が上がります。調査で家賃の支払いが苦しいと感じている人は49%。震災前は持ち家で家賃がかからなかった人や、安い家賃だった人もいます。収入や年金は増えなくても、家賃は上がっていきます。
 子どもが社会人になり、世帯収入が増えれば家賃も値上げします。「生活が厳しく、仕事を増やしたくても家賃が上がるため働けない」「引っ越し費用を貯められず引っ越すこともできない」との声もあります。
 部屋の気密性が高く、結露してしまうので換気扇を止めないように言われている人もいます。しかし、電気代は自腹。水光熱費も高く、お風呂に入らない人もいます。「出費を抑えるために、『外に出ない』『病院に行かない』『近所付き合いをやめる』ようになり、孤立してしまいます」と矢崎さん。

■心のささえはつながり

 調査結果を広く知らせるため、今年4月に記者会見をしました。医療費窓口負担免除の継続・復活、災害公営住宅の家賃軽減措置の継続、行政の相談体制の充実が重要だと訴えました。
 災害公営住宅の住民に話を聞くと、「バスの便が少なくて買い物が大変」「今でも生活が大変なのに、家賃が上がり、消費税も10%になったらどう生活すればいいのか」と不安の声も聞かれます。「私たちは友の会やお茶っこ会で元気をもらっている。1人でも多くの人に参加してほしい」と地域とのつながりが心のささえになっていると話す住民もいました。
 宮城民医連ではさまざまなイベントを災害公営住宅で開催しています。「関係づくりは難しいけれど、ちゃんと見ている人がいるとわかってもらうために地道に足を運び、かかわり続けることが大事」と矢崎さんは言います。

3割が受診控え 生活を守る政策を 熊本

 熊本地震から3年経った今も、仮設住宅での生活を余儀なくされている人がいます。熊本民医連は昨年11月~今年3月にかけて、9つの仮設団地と一部のみなし仮設で「被災者の健康と生活に関する実態調査」にとりくみました(本紙4月15日付)。

 被災者の医療費窓口負担等の免除措置は地震から1年半後の2017年9月末に打ち切られ、その後、仮設団地自治会長を中心とした免除復活を求める会を結成。2万筆の署名を県知事に届け県議会への請願も提出しました。しかし復活は実現できませんでした。そこで被災者がおかれた現状を把握するために、生活中心者への聞き取り調査を行い、6月11日の記者会見で調査結果を報告しました。

■8割が医療費免除を希望

 回答のあった83世帯のうち独居が41%、夫婦のみが22・9%を占め、生計中心者や家族が働いている世帯は45・7%、主な収入が年金の世帯は54・2%でした。高齢のひとり暮らしが多いことがうかがえます。
 受診回数を減らしたり、医療費の支払いに困っていると回答したのは28・9%。約3割が経済的理由により受診を控えていました。生活中心者が働いている場合、毎月1万円以上の医療費を負担している世帯が32・1%と平均値を上回ります。医療費窓口負担免除については、82%が復活を希望しています(図3)。
 Aさん(40代・男性)は妻と2人の子どもとアパート暮らしをしていましたが、地震で全壊となり仮設団地に住んでいます。持病があり薬を飲んでいましたが、医療費窓口負担免除が打ち切られてからは、お金がかかるため中断。持病が悪化し受診を再開すると薬が増え、よりお金がかかるようになりました。今後は、公営住宅に入ることが決まっています。「医療費が免除になればお金を貯めて、敷金や家具を買うお金をつくりたい」と、医療費窓口負担免除の復活を希望しています。

■不安でも相談できない

 生活の中でかさむものでは、食費との回答が最も高く32・5%。医療費や薬代、介護の費用がかさむとの回答は30・1%でした。生活の中で切り詰めているものでは、衣服・身の回り品代、食費や電気代が目立ちます(図4)。特に食費を切り詰めているとの回答は26・5%。医療費を切り詰めていると答えた世帯は15・7%でした。困りごとや不安なことは、病気や事故が46・3%、住宅再建が37・5%、収入が33・8%でした(図5)。
 Bさん(60代・男性)はみなし仮設に厚生年金でひとり暮らしをしています。糖尿病や高血圧、便秘、不眠があり月1回通院していました。医療費窓口負担免除が打ち切られ、今は2カ月に1度に減らし、貯金を切り崩して生活しています。災害公営住宅に入居予定ですが、家賃や近隣との関係に不安を抱えています。近所付き合いもなく、地域の活動に参加していないため、相談相手がいないことも心配ごとの一つです。
 Bさんのように日ごろから暮らしの相談をする相手がいない人は6%います。持病があり、住宅再建の見通しが立たない単身の高齢世帯に多いです。

■健康や生活の維持を

 Cさん(60代・男性)は仮設住宅で年金暮らしをしています。仕事ができなくなり、受診回数を減らし生命保険も解約、固定電話や新聞も止めました。来年3月で仮設住宅の入居期限が切れますが、公営住宅の抽選は外れました。建設の予定はありますが、建設場所は決まっておらず、行政に問い合わせても「わからない」と言われ不安を抱えています。
 熊本県は「住まいの再建」とうたいながら仮設住宅やみなし仮設の入居延長の要件を厳しくして強制的に退去させています。仮設を減らし復興したように見せるためです。しかし住居の問題だけでなく、健康の問題にも直面しています。3つの事例のように、いのちを切り詰めて生活をしている世帯も多く、住まいの再建=生活の再建ではないことがわかります。
 生活の再建のためには、医療費窓口負担免除の復活と地域のコミュニティーづくりや支援の強化が必要です。ともに調査を行った熊本学園大学教授の高林秀明さんは、「被災者の健康や生活を維持しながら再建することが重要で、行政には調査の結果や実態を踏まえた政策づくりをしてほしい」と記者会見で訴えました。

(民医連新聞 第1695号 2019年7月1日)

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