声明・見解

2019年9月30日

【声明2019.09.30】公立・公的医療機関の統廃合を狙った政府・厚労省による病院名公表に抗議し撤回を求める

2019年9月30日
全日本民主医療機関連合会
会長 藤末 衛

 厚生労働省は、9月26日、再編、統合が必要と判断した424の公立・公的病院名を初めて公表した。
 名指しされた病院のある地域住民にとっては寝耳に水の話であり、「受診できる病院が身近になくなる」、「お産できる病院を探すのが困難だ」などいのちと健康にかかわる不安の声が広がっており、厚生労働省が率先してこうした不安を広げたことに怒りを禁じえない。また、今回の厚生労働省の手法が地域の実情を無視したあまりにも機械的なやり方であることへの批判、地域医療構想をすすめる議論をかえって困難にするものとの批判の声が医療の専門家、行政担当者からもあがっているが、当然の批判である。
 今回、こうした強権的ともいえる姿勢を厚生労働省がとる理由は、2016年度に各都道府県に作成を求めた「地域医療構想」をもと、公立・公的病院のあり方について2019年3月末をめどに検討するための作業が難航しているからといわれている。しかし、本来こうした具体的な検討は、地域ごとの状況、実態に即して行われるべきであり、そのためにこそ構想区域ごとに民間病院も参加した「調整会議」が作られ、議論がすすめられていたはずである。にもかかわらず、各医療機関のあり方に対して何ら決定する権能を有しない厚生労働省が、実名まであげ、事実上の強制と取れる要請をおこなう今回の病院名公表については、撤回されるべきと考える。
 根拠として利用されたデータは、2017年度の診療データをもとにした単年度の診療実績、周辺の医療機関の状況、人口規模などである。多くの医療機関が深刻な医師不足の中で、必要な診療すら不可能となっている地域も多いことをみても、医療提供体制を議論していくには耐えられないデータである。
 さらに看過できないのは、この公表が、「経済財政運営と改革の基本方針2019」(6月21日閣議決定)に沿った具体化であり、その中には「民間医療機関についても、2025年における地域医療構想の実現に沿ったものとなるよう 対応方針の策定を改めて求める」とあることからも、今後も官邸によるこうした拙速で強権的な病院の再編・統合により、地域医療の崩壊が加速させられていくと予測されることである。地域医療の提供体制は、一度崩壊すると再生は極めて困難である。
 全日本民医連は、厚生労働省が今回の公表データを撤回することをあらためて求めるとともに、安倍政権が進める医療費削減のみを目的とした医療機関の統廃合ではなく国民の健康権を保障しうる医療提供体制の構築に向け、幅広く共同を広げていく決意である。

以上

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