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2020年2月14日

あすをつむぐ看護

看護師2年目の大西彩季さんは「働きやすい職場です。先輩にもすぐ相談できる」と笑顔で語る

看護師2年目の大西彩季さんは「働きやすい職場です。先輩にもすぐ相談できる」と笑顔で語る

 徳島健生病院には4つの病棟がある。そのひとつ「回復期リハビリテーション病棟」(以下、回リハ病棟)には、骨折などで人工関節を入れた人や、手術後に身体の機能が低下した人、脊髄の損傷や脳の疾患によって運動器に障がいが生じている人などが入院。身体を入院前の状態に近づけ、自宅や施設へ帰れるように日々リハビリを行っている。
 患者の一日は“着替え”から始まる。起床すると寝間着から動きやすい服装に着替え、身支度を整える。その日一日、病院の外に出ることがないとしても、着替えることには大切な意味があると看護部長の野上由起子さんは言う。
 「大事なのは生活のメリハリです。朝になったら起きる。ごはんを食べたら歯を磨いたり、顔を洗う。服に着替える。当たり前のように毎日行ってきたことを入院中も同じように行うことは、退院後の生活につながるんです」。
 人によっては、袖を通したりボタンをかけたりするだけでもひと苦労。だが、職員はできる限り手伝わない。身のまわりの何気ない動作も、ひとつひとつが退院後の生活に活きる大切なリハビリになるからだ。職員の役割は見守ることと焦らせないこと、そして「寄り添う」こと。

「散歩に行きますか」

 「患者さんは、やる気や不安、葛藤など、さまざまな感情を抱えています」と語るのは、看護師4年目の大木絢音さん。健康な人がリフレッシュや体力づくりのために身体を動かすこととは異なり、リハビリは痛みや身体が思うように動かないもどかしさがあり、つらくて苦しい。そんな状況のなかで、患者の「本当はこうしたい」という本音を聞き出すことは容易ではない。
 なかには、弱気になり消極的な発言が多くなる人も。そんなときは「散歩に行きますか」と声をかけ、病院の外に出るという。外の風に当たりながら、リハビリとは関係のない話をして歩く。すると「実はね…」と、心の内にあるものをぽつりぽつりと話し始めることがある。
 「食べることや旅行が好きで、休日は話題のお店に行ったりします」と大木さん。そこで食べたものや見たものをリハビリの合間に話すと、患者からも言葉が返ってくる。好きなものを嬉しそうに語る看護師の姿にホッとして、本音をこぼせるのかもしれない。「頑張れ」と励ますだけではない、大木さんなりの“寄り添い方”だ。

患者をチームで支える

 回リハ病棟で大切なのは“チーム”。「特に介護福祉士の力が大きい」と語るのは、5年目の看護師、曽我部未裕さん。身体のケアや薬の影響など、医療の視点を中心に患者を看る看護師に対し、介護福祉士は食事やトイレなど日常生活の主な動作を細かくチェック。患者本人をはじめ、支える家族や職員も安全に介護をするために必要な視点が介護福祉士にはある。
 曽我部さんは「この患者さんを自分が家でみるとしたら、何に困るだろうか」と想像しながら、介護福祉士やリハビリ職員、医療ソーシャルワーカーと相談。本人や家族の要望も聞きながら、チームで力を出し合って少しずつ望む生活に近づけていく。
 回リハ病棟へ異動する前は、3年8カ月の間、急性期病棟に勤務していた曽我部さん。いのちを救うことが最優先の現場から、日常を取り戻すための現場に来て「最近ニュースが気になるようになった」という。医療費の窓口負担額や介護保険料など、政治の動きが患者の退院後の生活に深くかかわるからだ。
 長い人生からみれば、入院している期間はほんのわずかかもしれない。しかし、そのわずかな時間に、退院後の生活にも思いを寄せてくれる人たちがいたら、患者はどれほど心強いだろうか―。

 現在、徳島健生病院の隣では、12月のオープンをめざして新病院の建設が進められている。職員と徳島健康生協の組合員が「どんな病院にしたいか」と、熱い議論を交わしてきた新病院は、「リハビリ強化型地域包括ケアミックス病院」として新たな一歩を踏み出していく。

いつでも元気 2020.2 No.340

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