いつでも元気

2020年6月30日

お金をかけない健康法

 新型コロナ禍のまっただ中です。私は埼玉にあるクリニックで院長を務めています。第一線の医療現場は、私の医師人生47年間で未だかつて経験したことのないほど、異様な緊張の中にあります。感染の危険と隣り合わせの中、患者さん、介護利用者さん、そして職員と医師自身を守るための対策を中心にした日々を送っています。
 前回までは「よくかむ」ことの重要性について、各分野の専門家の協力も得て解説しました。続いて、肥満克服のテーマでお話しします。
 実は、今直面している新型コロナも、肥満とは大いに関係がありそうなのです。WHO(世界保健機関)は新型コロナが重症化する危険因子を挙げて、注意を促しています※1。「高齢者や基礎疾患のある方は重症化しやすい」ことはよく知られていますが、肥満も重要な危険因子として報告されています。
 米国ニューヨーク大学の報告によると、肥満度を表すBMI※230~34の人は30未満の人と比較して、新型コロナによる緊急入院の頻度が2・0倍、ICU入室頻度が1・8倍に上りました。BMI35以上の人の場合は、その数字がそれぞれ2・2倍、3・6倍に上がります。まさに肥満は万病のもとです。
 そもそも肥満は万病のもととは、肥満になるとさまざまな病気を合併しやすいことから言われているのです。糖尿病や脂質異常症、高血圧や高尿酸血症、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、脂肪肝などなど、お馴染みの病気はすべてと言っていいほど肥満と関連しています。
 さらに過剰な体重が骨や筋肉に負担をかけ、股関節や膝の痛み、腰痛など整形外科的な疾患にもつながります。また、大腸がんや乳がんなどの悪性腫瘍とも関連があるとされています。
 私は普段から外来で、生活習慣病の予防と健康増進のために肥満克服の重要性を説いていますが、新型コロナ対策としても肥満克服がますます重要になってきているのです。

※1 新型コロナ重症化の危険因子
①65歳以上②慢性肺疾患③喘息④糖尿病⑤重症心疾患⑥透析中の腎疾患⑦免疫能の低下⑧肝疾患
※2 BMI=[体重(kg)]÷[身長(m)×身長(m)]。25以上は肥満とされる


大場敏明
おおば・としあき
1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒、内科医。船橋二和病院、東葛病院、みさと協立病院などを経て、クリニックふれあい早稲田(埼玉県三郷市)院長。著書に『ともに歩む認知症医療とケア』(現代書林)、『ドクター大場の未病対策Q&A』(幻冬舎)、『かかりつけ医による「もの忘れ外来」のすすめ』(現代書林)

いつでも元気 2020.7 No.344

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