民医連新聞

2020年10月6日

相談室日誌 連載485 身寄りのない患者に寄り添い SDHの視点で考える(高知)

 Aさんは60代後半の男性です。50歳で退職した後、お遍路参りのため高知へ来高。訳あってそのまま高知へとどまるも貯金が底をつき、身寄りのいないAさんは以後20年間、ホームレス生活となりました。そんな中、ホームレス支援団体と出会い、ADLも低下していたAさんは無料低額診療事業を行っている当法人の診療所を受診。両下肢痙性麻痺、両変形性股関節症、右下腿潰瘍の診断で、そのまま当院へ紹介入院となりました。
 入院後すぐにSWが介入し、生活保護と介護保険を申請。その際、戸籍が職権削除されていることが判明し、そのため保護開始の決定までに時間がかかりました。ADLの低下や身寄りがないことを理由に退院後の生活場所も定まらず、病状も思うように改善せず、Aさんの不安は増大。「死にたい」など投げやりな発言もありました。面談を重ね、アパート生活が困難なAさんに見合う施設を提案するも、入所手続きが難航するたび悲観的となり、その都度、話を聞いてAさんの思いに寄り添いました。
 疾病、貧困、家族や社会と疎遠、人付き合いが苦手など、経済的・社会的な要因が絡み合い、Aさんはどこからも孤立し、20年間という長い期間、ホームレス生活を続けざるを得なかったのだと思います。環境の変化で、不安や焦りが募り、たびたび悲観的となったAさん。「衣食住の心配をせず、安心して暮らせる自分の居場所が必要だ」と感じ、支援者とも協力しながら、私たちも支援を続けました。しかし退院当日もAさんの表情は固く、相変わらず悲観的な発言をしていました。
 退院後、Aさんが暮らす施設を訪問しました。「入院中は先が見えず不安だった。でも施設へ入れてよかった」と笑顔で話すAさんの姿にホッとしました。入院を機にさまざまな要因が改善され、何よりAさん自身が一歩踏み出したことで、“自分の居場所”を見つけることができたのだと実感しました。
 Aさんの事例を通し、患者の孤独や不安に寄り添うこと、患者を支援する多方面と連携することの重要性をあらためて学びました。私たちSWに何ができるのか? これからも突き詰めていきたいです。

(民医連新聞 第1723号 2020年10月5日)

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