声明・見解

2020年10月6日

【会長声明2020.10.05】コロナ禍の教訓を正しくふまえ、地域医療を守るために 9月4日付厚労省事務連絡「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備」への意見

2020年10月5日
全日本民主医療機関連合会
会長 増田 剛

 8月28日付け政府の新型コロナウイルス感染症対策本部による「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組」を具体化するかたちで、9月4日に厚労省から発出された事務連絡「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」(以下「事務連絡」)により各都道府県での具体化が始まった。マスコミ報道では、保健所を通さない方法で、より身近でかつ検査も受けやすくなる制度として宣伝されている傾向が目立つ。しかしながら、医療現場では少なくない懸念が表明され、具体化することで地域医療に新たな混乱が発生することが予想される。以下、問題点を指摘する。

(1)かかりつけ医の手挙げによる「診療・検査医療機関(仮称)」は十分準備・機能出来るのか?

 報道等によれば、自治体や郡市医師会でかかりつけ医に向けたアンケートなどが行われている。兵庫県保険医協会の会員向けアンケート(回収率21.6%)で受託意向は18%に過ぎず、同アンケートでは動線分離の困難さや高齢化した担当医自身の感染不安などが表明された。札幌市のアンケートでは診察や検査への参加を表明したのは2割弱、京都府は800の目標に対して手上げは約半数に止まった。
 「事務連絡」で示された「診療・検査医療機関(仮称)」の役割(患者療養先の決定、自宅・宿泊療養者の健康管理、偽陰性疑いへの対応、家庭内感染対策の指導等)には現行の保健所機能が多数含まれており、それに対応可能なかかりつけ医はかなり限定されると思われる。加えて、新型コロナウイルス感染症への対応も半年を過ぎ、かかりつけ医の経営的困難は益々大きくなっており、風評被害などの懸念も含めて手挙げの判断に逡巡するかかりつけ医も多数あるものと推察される。
 国の方針では「診療・検査医療機関(仮称)」に指定された医療機関には相応の財源投入が予定されており、加えて「事務連絡」ではわざわざ「応召義務」の項が設けられるなど、手挙げせざるを得ない状況が作られてきているとも言えるが、一方で、感染対策上の人材・資材の限界から、どうしても手挙げ出来ないかかりつけ医の今後は一体どうなるのかなど、地域医療をまもる視点での継続した検討が求められる。

(2)保健所機能の縮小、公的サービスの低下に繋がらないような配慮がされているか?

 今回の提案が出された背景の一つに現行の保健所業務のひっ迫状況が指摘されている。新型コロナウイルス感染症への対応で全国の保健所職員が過重労働に晒されていることは明らかであり、多くの自治体で部署間異動などにより職員の増員を図っている実態がある。言うまでもなく引き続く援助の強化が必要であり、今回の提起(保健所機能のかかりつけ医への実質的委譲)は、国により保健所体制の抜本的強化が行われていない中で、緊急避難的にその役割をかかりつけ医がシェアするという提案であり、決して恒常的な在り方を示しているものではないという共通認識が必要である。
 そもそも、日本の保健所数が地域保健法(1994年制定)により852カ所(1992年)から469カ所(2020年)に減らされてきたことが、現在の保健所機能のひっ迫状況を創り出した主因であることは明らかであり、そのことを今回の事態の重大な教訓とするべきである。先の見えない「事務連絡」だけでは、保健所機能の縮小、公的サービスの低下を想起させ、地域に不安を拡げる懸念があることを指摘しておきたい。国は保健所の増設、体制の強化など保健所機能を充実させる中長期的な方針を早急に提起しつつ、現状に対処すべきである。
 併せて、新型コロナウイルス感染症の指定感染症の見直し(「2類外し」)についても慎重な対応が必要と考える。感染収束の目処すら立っていない現在、医療費の公的負担や必要な隔離などのパンデミック対応を緩めることは許されず、統計処理や教訓の蓄積など公衆衛生上の課題も山積している。この状態での指定見直しは拙速と言う他ない。適切な「類」への変更をする場合であっても、現在の対応に齟齬を来たすことのないような配慮が求められる。

 以上、「事務連絡」の問題点を指摘した。コロナ禍の教訓を正しく掴み、地域医療が崩壊しないような施策を講じることを強く求めるとともに、各地域で行政、保健所、医師会などとタッグを組み、受療権がまもられるような体制構築に尽力する所存である。

(以上)

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