介護・福祉

2020年11月3日

相談室日誌 連載487 コロナ禍で施設見学できず できる支援の模索が大切(千葉)

 今年の1月末、「3月に取り壊すことが決まっているアパートから退去してくれない高齢者がいる」と、今までかかわりのなかった不動産管理会社から、当地域包括支援センターに電話がありました。Aさんは70代後半の女性で認知機能の低下が見られ、自分で転居の手続きをすすめると言いながら何もしていません。保証人になっている遠方の親族に連絡してもかかわりを拒否され、困っている、ということでした。こちらはあくまでも「Aさん本人の支援を行う立場」であることを伝えた上で、Aさんに会いに行くことにしました。
 管理会社の関係者と誤解されないよう、私と当センターの看護師の2人で訪問したところ、「誰か」にブレーカーを落とされ、暖房器具が使えなくなった、という部屋でAさんは布団を頭までかぶっていました。以前、その土地の所有者の弁護士から立ち退きを強く迫られたことがあったそうで、Aさんはおびえていました。多少話のつじつまが合わない部分もありましたが、転居をしなければいけないことは認識しており、当センターが支援をすることを受け入れてくれました。当初、Aさんは近くのアパートへの転居を希望しましたが、経済的な問題やAさんの能力の面から、また保証人の問題からも、それは困難でした。最終的には、保証人がいなくても措置入所できる養護老人ホームへの転居をめざすことになりました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で市内の施設は見学ができなくなり、市外の施設なら見学できることを、Aさんに提示しました。
 そんな中、市内の施設の相談員が施設内の設備や活動、食事の献立などを写真に撮って送ってくれたことで、Aさんは施設の見学ができないまま入所を決断。それまで受診を拒否していましたが、入所のための健康診断を受け入れました。その結果、必要となった専門外来での精査も経て、晴れて入所可能となった時には、すでに5月中旬になっていました。入所当日、区の担当者と車で施設に向かうAさんの表情は、不安から解放されたようで晴れやかでした。
 コロナ禍でさまざまな制約がある中でも、何ができるかを模索し、今できる支援を行う大切さを実感した事例でした。

(民医連新聞 第1725号 2020年11月2日)

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