介護・福祉

2020年12月23日

【声明2020.12.21】感染症対策の強化、介護サービス基盤の再構築・強化に向けて、介護報酬の大幅な引き上げを改めて要請する

2020年12月21日
全日本民主医療機関連合会 会長 増田 剛

 12月17日、厚生労働省は2021年介護報酬改定に際して改定率+0.70%を発表した。低く据え置かれた介護報酬のもとでの経営難と慢性的な人手不足で疲弊しきっていた介護事業所をコロナ禍が直撃する中、介護報酬の引き上げを強く求めてきた介護現場、関係諸団体の要求を反映したものである。

 しかし、介護事業所が現状で抱える様々な困難を打開していく上で0.70%という引き上げ幅はあまりにも低い。
 そもそも介護事業所はコロナ禍が直撃する以前から厳しい経営状況に置かれてきた。とりわけ全体で2.27%、基本報酬等部分で4.48%もの引き下げが断行された2015年改定以降、老人福祉・介護事業者の倒産件数は急増しており、改定翌年の2016年以降は100件を超えて推移している。2018年度改定で+0.54%の引き上げが図られたものの倒産件数は依然として高止まりしたままであり、小規模事業所を中心に相当数の事業所が廃止届による廃業を余儀なくされている。そうした状況に今般のコロナ禍の影響が重なり、介護事業所の経営的な体力はいっそう低下している。特に3月~5月の「第1波」に生じた利用控え等による大幅な減収と感染対策に係る費用の増大が事業所経営を大きく圧迫しており、現在に至ってもそれは解消されていない。こうした事態は0.70%程度の引き上げで到底カバーできるものではない。
 感染症対策に対する介護報酬は0.70%の引き上げ分のうち0.05%にとどまり、しかも来年9月までの特例とされた。介護報酬による十分な財政措置を講じないまま、運営基準の見直しを通して事業所に感染対策を義務づけるだけでは、改定の論点として掲げられた「感染症・自然災害への対応力強化」に照らしても甚だ不十分といわざるを得ない。
 介護事業所の人手不足は深刻化の一途をたどっている。その解消のためには大幅な処遇改善が必須だが、今回の改定幅で全産業平均給与と比較して月8.5万円(ヘルパーは10万円)もの開きがある現状を大きく改善することは不可能である。また、見守りセンサー等のICT機器の活用を要件とした人員配置基準の緩和は、2040年に向けて全世代型社会保障改革が打ち出した、より少ない人員で介護にあたらせる「生産性の向上」の一環であり、ICT機器の活用が現場の負担を軽減させるものとはならないばかりか、逆に人員がICT機器に置き換える形で減らされることにより、結果として介護の質の低下や業務の過重化がもたらされることになる。人手不足の打開は「生産性の向上」ではなく、介護報酬の大幅な引き上げによる処遇改善、増員によってこそ行われるべきである。

 介護事業所が現状で抱えている困難を打開し、感染症の長期化に対する備えを行うとともに、今後増大する介護需要に応えるべく地域の介護サービス基盤の再構築・強化を図るために、そして何よりも、いま現在、感染リスクを背負いながら利用者・家族に寄り添いその生活を必死に支えている介護現場・スタッフの奮闘に報いるために、介護報酬の引き上げ、基本報酬の底上げを改めて求める。介護事業所に対する全額公費による減収補填の実施をふくめ、2021年度予算編成の中で再検討を行うよう重ねて要請するものである。

以 上

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