MIN-IRENトピックス

2021年2月2日

休業・入院拒否に罰則 病床確保拒否の医療機関公表 人権無視、非科学的対策は撤回を

 政府は1月22日、営業自粛に協力しない事業者や、入院を拒否する新型コロナウイルス陽性者に対し罰則を科したり、陽性者の受け入れ要請に応じない医療機関名を公表することなどを可能にする法改正を閣議決定しました。全日本民医連の増田剛会長はただちにこれを撤回するよう求める声明を発表。問題点について事務局次長の林泰則さんに聞きました。(丸山聡子記者)

 陽性と診断され、入院を勧告されたのに拒否した人に罰金か懲役を科す内容です。保健所の調査への協力を拒んだ人に罰金を科す案も示されています。日本医学会連合や日本公衆衛生学会は「罰則では感染抑止も困難となる」「公衆衛生上も実践上もデメリットが大きいことは確認済み」と、反対を表明しました。
 入院を拒む人の中には子育てや介護を担っていたり入院すれば収入が途絶えたり、差別や偏見への不安があるなど、理由があります。拒否する人が現状でどのくらいいるのか、理由は何かなど「改正」の根拠が明らかにされていません。
 罰則を設けることは恐怖や偏見・差別を増幅させ、感染者は隠れざるを得ない状況に追い込まれるでしょう。これは隔離を強制したハンセン病政策などの歴史から見ても明らかです。感染症法は前文で「感染症の患者等の人権を尊重し」と明記しています。これを無視した、人権を保障しない強権的な感染対策はすぐに撤回すべきです。
 病床確保の勧告に応じない医療機関名の公表も問題です。陽性でも入院できず、自宅で亡くなる人が増加。高齢者施設で感染者が出ても、入院させずにその施設で最期まで対応することを求められる事態です。
 政府は新自由主義のもと、医療や介護の現場で効率化をすすめてきました。その結果、現場では病床も医療従事者も足りず、必死に医療を守っています。民間病院がコロナ感染者をあまり受け入れていないという批判がありますが、民間病院の多くは中小病院であり、地域で救急やリハビリ、慢性期や小児科などの役割を担っています。そこで感染者も受け入れたら、通常の医療は成り立ちません。地域ごとに病院の特性に応じた役割分担が必要であり、病床の提供をただ求めるだけでは対応できません。
 政府がやるべきは、科学的な知見にもとづいて政策を決定し、感染者を減らすことです。危機に乗じて支配を強めるようなやり方は、断じて見過ごせません。医療機関の経営危機が深刻さを増す今、罰則ではなくすべての医療機関への財政支援をまず行うべきです。

(民医連新聞 第1730号 2021年2月1日)

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