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2021年3月16日

コロナでなにが (5)医事課のソーシャルワーク機能を強化 「まず診る」「援助する」無低診利用者は3倍、食料支援も

 東京・立川相互ふれあいクリニックは、コロナ禍以前から医事課でソーシャルワーク機能向上をはかるとりくみを行ってきました。新型コロナウイルス感染症の流行で困窮事例が増える中、支援を強めています。とりくみの中心には2年目の若手職員の姿もあります。医療機関から見えるコロナ禍の影響やとりくみについて聞きました。(代田夏未記者)

 同クリニックは、気になる患者に寄り添うために、以前からフロアごとに気になる患者ミーティング(以下、「気に患ミーティング」)をしていました。しかし、同じ患者が違う診療科を受診することもあります。多職種の持つ知識を共有して支援につなげようと、週に1回、各フロアの看護師、医事課、SW、事務管理者など7~8人が集まる「気に患ミーティング」を、2019年11月から始めました。ミーティングの事務局を務めるのは、2年目事務の入部佳介さん。すべての「気に患ミーティング」に参加しています。

■寄り添う視点に立って

 新型コロナウイルス感染症の流行で「いつもは市販の薬を買っていたであろう20~30代の無保険の人が、感染を疑い受診につながった」と入部さん。受診時に生活状況を聞くと「普段の生活で手いっぱいで、(滞納分も含めて)保険料が払えない」という人が多数います。「無保険の外国人の人もいるが、いくらがんばっても保険に加入することは難しい」と高い壁があることも見えました。
 先日は、問い合わせの電話から受診につながり、入院治療となった患者から、感謝の手紙が届きました。「僕のような若手職員でも『お金のことは気にせずかかってください』とすぐに言えることが、患者の安心にもつながっていると思う」と入部さん。「まっ先に患者に対応する医事課が寄り添う視点に立てている」と事務次長の蓮池安彦さんは言います。来院したらまず診察を受けて、安心したところで話を聞くようにしています。
 以前は患者の相談に対し、どこにつなげるべきなのか医事課ではわからず、すべてSWにつなげていました。しかし、医事課でも支援につなげようと、自分たちで使える制度や支援の方法を調べて、それでもわからない場合はSWに依頼することにしました。

■困ったときのよりどころ

 昨年から、受診を中断している患者に無料低額診療事業(以下、無低診)を勧める活動にも力を入れています。コロナ禍の影響もあり、無低診の利用者は前年の3倍、減免額は4倍に増加しました。「気に患ミーティング」は、1年で約120人、月に10人ほどの名前があがり、解決に向けて情報共有をすすめています。
 窓口では非常勤の職員も対応します。受付や会計で気になった患者について書き込むファイルを作成し、次に来院した際に話を聞けるように徹底しています。
 ほかにも、2019年12月にはフードボランティアを立ち上げました。「気に患ミーティング」で、無低診や生活保護を利用する家庭では食費が大変な人が多いという話になり、「食べるものがないなら、あるものをかき集めて渡したら?」の言葉がきっかけでした。職員や健康友の会、地域の人たちから寄せられた食料品をクリニックに常備しており、受診の際にフードボランティアに立ち寄ると、食料品を受け取れます。支援と受診がセットになっています。蓮池さんは「困ったときにここに行けば助けてもらえる、という場所になったら」と言います。

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 一方で、自分から困りごとを言ってくれる人は一部に過ぎません。蓮池さんは「受診につながっていない人への支援も課題。無低診やフードボランティアを知らせていくことも必要です。全職員が『まず診る、援助する』ことをモットーに支援にとりくめるようにしたい」と力を込めます。

(民医連新聞 第1733号 2021年3月15日)

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