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2021年1月19日

コロナでなにが ④薬局から見える影響 受診控え3割薬を間引き、体調悪化も 薬局アンケートから

 北海道保健企画は昨年、無料低額診療事業(以下、無低診)を利用する患者に郵送でアンケートを実施しました。その結果、コロナ禍での不安や困窮などの切実な実態が明らかになりました。第9回道民医連学術・運動交流集会(2020年10月)で石井智幸さん(事務)らが報告しました。

 北海道保健企画は2014年から6年間、無低診の患者を訪問してきました。きっかけは、保険薬局で薬代の負担が発生する(※下)ことが足かせとなって、治療を中断するなどの影響がないか調べたい、という思いでした。これまでは薬剤師や事務を中心に、のべ310人の職員が参加し、200軒を訪問しています。

■あらわになる困難

 以前は訪問活動でわかった患者の生活実態をもとに、必要な支援の拡充や、保険薬局にも無低診を適用することを求める運動につなげてきました。
 しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で訪問活動を断念せざるを得ず、代わりにアンケートでの聞き取りを行うことにしました。アンケートは無低診の制度や生活状況、コロナの影響などについて選択形式(一部自由記載あり)で質問。417世帯に郵送し、191世帯(46%)から回答がありました。
 回答では60代以上が全体の64%、1人または2人世帯が66%と高齢者の独居・少人数世帯が多くを占めています。身の回りに相談できる人が「いない」との回答は49%と約半数にのぼりました。ひと月の収入が15万円以下の人が74%。コロナの影響で65%の人が「生活が苦しくなった」と回答し、35%が収入減(図1)となっていました。外出や家族・友人との交流機会の減少など、地域のコミュニティーが分断されていることもわかりました。
 さらにコロナの影響で受診を控えた人は全体の27%(図2)。そのうち薬を飲まなかったり減らした人が25%、体調の悪化を感じている人も12%おり、健康への影響も出ていました。同時に無低診の患者にとって、薬局での薬代が負担になっていることも明らかになりました。
 困りごとを聞いた自由記載欄には、収入や生活、健康への不安がつづられていました(下表)。

■気になる患者へ電話かけ

 アンケート回収後、相談があった患者や気になる患者に職員が直接電話かけをしてフォロー。その結果、利用可能な制度を紹介したり、申請につなげるなど、問題が解決できた事例もありました。
 対応した職員からはさまざまな反応がありました。「普段は聞きにくい患者の実情や生の声が聞けた」「自分たちの活動の意義を実感した」「患者との距離が縮まった」との声も上がっています。

* * *

 今回のとりくみを通じて課題も見えてきました。コロナによる経済的な困窮に加え、社会的な孤立が深刻化し、困っていても相談できない人が増えています。無低診や利用可能な制度を知らない人も多く、必要な人に必要な制度をつなげたり周知する活動が求められています。
 アンケートの結果から、無低診が保険薬局を対象外としていることで、受診控えや体調悪化につながっていることがわかりました。この実態を自治体へ届け、さらなる制度改善を求めていきます。

無料低額診療事業が実施できるのは病院・診療所・老健に限られ、保険薬局は適用除外。北海道、高知、沖縄などの一部自治体では独自の助成を行っている。保険薬局も無低診を適用することが求められる。


自由記載から(一部抜粋)

○仕事がなくなり収入のめどがつかない。
○経済的に大変で引っ越しを考えているが、引っ越し代もたまらない。子どもの収入も減り生活苦が続いている。
○これからの時期は灯油代が心配。切り詰め生活も限界。
○歯科にかかりたいが治療してもらえるのか不安。
○国保料の支払いが遅れているため、先が心配。以前役所に相談に行ったが、冷たい対応をされたこともあり行きづらい。
○薬代を普通に払いたいのにできないことが申し訳ない。

(民医連新聞 第1729号 2021年1月18日)

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