民医連新聞

2021年5月25日

コロナでなにが ⑥連携の強化 地域ひとつに いのちを守る 東京・健生会も参加する 新型コロナ対策圏域病院会議

 コロナ禍でどうすれば限られた地域の医療資源を生かし、住民のいのちと暮らしを守ることができるか。東京・健生会のある東京都多摩立川地区では、地域の新型コロナウイルス対応病院と保健所が集まり、情報共有や連携強化をすすめる定例会議を開いています。会議の実現や継続に向けたとりくみを聞きました。

 健生会は昨年から立川相互病院を中心に、新型コロナウイルス患者を受け入れてきました。「昨年末の第三波が起こり始めたころ、このままでは地域医療が守れないとの危機感が強まった」と話すのは、会議の事務局を担う健生会事務局長の長久保清人さんです。

■もう待てない、現場が動く

 感染者が増え続け、病床ひっ迫が近づいても行政の動きは鈍く、なかなか地域の実情がわからない状況が続きました。健生会理事長の草島健二さんが八王子市の病院連携のとりくみから、「多摩立川地区でも、法人や団体の枠を越えたコロナ対応病院の連携が必要では」と問題提起しました。
 行政が動かないのなら、と健生会の事務局が中心になり関係病院に会議への参加を呼びかけました。昨年7・8月に3病院で集まった経験を生かし、第三波では6病院に対象を広げ、さらに保健所にも声をかけて働きかけました。
 呼びかけへの反応はさまざまで、「待っていました」と快諾をしてくれることもあれば、責任者への取り次ぎが思うようにいかないことも。日程調整にも苦労しましたが、何とか昨年12月24日に1回目の会議を開催できました。

■本気の連携、思いはひとつ

 会議はZoomを利用したオンライン形式で、時間も50分と決めて実施。病院長や感染対策責任者など、決定権を持つ参加者が集まります。事前に各病院の担当者にアンケートを送り、コロナ対応や他の参加病院への質問事項などを集約・共有して、会議時間の短縮や効率化をはかりました。
 会議では地域の感染状況、各病院のコロナ患者受け入れや検査の実施状況、職員感染やクラスター発生時の対応など、現場の具体的な情報を共有しました。「どの病院からも積極的な情報共有があり、地域を守る強い意志を感じた」と長久保さんはふり返ります。保健所からも東京都のクラスター対応や管轄内のリアルタイムの資料共有、医療機関への要望などがありました。
 参加病院からは「有意義な情報共有ができた」「各病院の感染対策を知ることができ、励みになった」など好感触。その後のコロナ受け入れベッド拡大などにもつながり、毎月第4木曜日の定例開催が決まりました。

■“新たな公共”つくる

 会議はこれまで5回開催(5月10日時点)。2月までは当初の6病院と保健所で集まっていました。しかし、保健所からの声かけもあり、3月からは第四波に備え、症状の落ち着いた患者を受け入れる後方支援病院も交えた13病院、4月には14病院での会議へ発展。ワクチンの接種マニュアルや接種状況、副反応とその対応などの情報共有も行われました。また保健所が、圏域のコロナ病床数の状況を把握できないことなども明らかになりました。病床ひっ迫が予想される中、病院間の連携の強化や回復期への受け入れ調整などの具体化が今後の課題です。
 草島さんはこれまでの圏域病院会議のとりくみを「立川モデル」と名付けています。「地域での情報共有と協力が感染症対策の原動力になっており、救急分野の診療や“新たな公共”をつくるとりくみになっている。市町村単位ではなく、圏域で考えて調整してゆく機能が重要」と強調します。

* * *

 コロナ禍という危機に直面し始まった会議ですが、長久保さんは「健生会のとりくみは、地域の公共財としての急性期病院をこれまでの競争から、協調に転換させています。コロナ対応だけでなく、今後の地域医療の発展やすみ分けなどにもつながれば」と希望を語ります。(稲原真一記者)

(民医連新聞 第1737号 2021年5月24日)

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