民医連新聞

2021年6月22日

フォーカス 私たちの実践 DPNSで看護業務効率化 埼玉西協同病院 安全性や知識・技術の向上にも効果

 埼玉民医連2020年度学術運動活動報告集で日中の看護を2人1組で行う「デイ・パートナーシップ・ナーシング・システム」(DPNS)の効果・課題が報告されました。埼玉西協同病院の山梨忍さん(看護師)の報告です。

 当病院のA病棟は内科中心の一般急性期病棟(50床、10対1看護)です。平均在院日数は12・5日で、眼科手術や内視鏡的粘膜切除術などの短期入院にも対応しています。
 患者は高齢者が多く、病態は複雑多様で、退院調整の支援など、求められる業務は広範囲です。しかし看護師の臨床経験は1~5年目が約7割と若く、残業が常態化していました。そこで業務効率化や医療安全、知識・技術の向上を目的として2020年度よりDPNSを開始しました。穂刈氏(※)はメリットとして業務効率化、患者との円滑なコミュニケーション、スタッフ間のコミュニケーションの増加と指導の充実をあげています。一方、パートナーによって「仕事のしづらさ、ペースの違いによる負担感」が生じるなどデメリットもあげています。
 A病棟におけるDPNS導入後の看護師の認識を調査、分析しましたので報告します。

 【対象】DPNS導入後A病棟で継続勤務している看護師17人

 【期間】2020年6~12月

 【データ収集方法】「DPNSを導入して良かった点・悪かった点」について選択式および自由記載のアンケートを実施(無記名)。

 【結果】17人全員が回答
 「経験年数」…1~3年4人、4~6年6人、7年以上4人、無回答3人
 「DPNSはやりやすかったか」…やりやすかった12人、やりにくかった3人、変わらない1人
 「時間外勤務は減ったか」…減った12人、増えた1人、変わらない2人
 (自由記載の内容は参照)

 【考察】
1.業務、コミュニケーションについて
 
DPNS導入で「一人の時よりも細やかにケアできる」「先輩と行動するため聞きやすく、指摘もあり視野を広く行動できる」など、看護の質向上につながっていることがわかりました。「業務時間が短縮」したとの声も寄せられました。一方「業務分担に悩む」「情報共有の不便さを感じる」などの声もあり、ペアによっては心理的な要因もからみ、業務のすすめ方にばらつきが出たり、一人の業務スタイルからの転換がはかれないケースも発生していると考えられます。
 DPNSでは、パートナーとの関係性がコミュニケーションや業務効率にも影響します。スタッフ一人ひとりがPNSの理解を深め、違いを認めあい、受け入れあうことが必要です。病棟全体でPNSの理解を深めることや、先輩看護師のパートナーシップの発揮が期待されます。
2.事故防止・安全について
 「ダブルチェックがしやすい」ことから、確認不足や処置の未実施などを防げています。パートナーといっしょに確認しあうとともに、一人ひとりが責任をもって患者を受け持ち、報告しあうことが安全確保につながっていると考えられます。
3.教育・指導について
 パートナーの看護技術を間近に見ることで新たな視点が学べ、学習面でも効果的だとわかりました。重症患者の受け持ちや難易度の高いスキルを必要とする場面に遭遇しても落ち着いて対応でき、段階的な教育・指導を展開しやすい環境となったと考えられます。しかし一方的な知識・技術の伝達・指導となっているケースがあることも調査で再認識できました。

 【結論】DPNSが業務効率化や安全なケアの実施につながり、教育・指導面でも有意義だとわかりました。定着に向け、病棟全体でパートナーシップマインドの学習を深めることやDPNS推進のリーダー育成などが課題です。

※穂苅智美、櫻澤絵里子他「デイ・パートナーシップ・ナーシング・システムのメリット、デメリット 導入1年後の調査結果から」(『第47回日本看護学会論文集(看護管理)』P11~14、2017)

(民医連新聞 第1739号 2021年6月21日)

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