民医連新聞

2021年8月3日

あれから10年 私の3.11 ⑪小さなハガキにあふれる悲痛な声 岩手県保険医協会事務局長 畠山 恒平

 4月に陸前高田市で開催された10周年記念集会に参加しました。ここは、私が数年間過ごしていた大切な町ですが、市街地が壊滅的な被害となり、震災直後に訪れたときは、当時の記憶と凄惨(せいさん)な状況が一致せず、ただただ呆然(ぼうぜん)とするだけでした。
 岩手県における、被災者である国民健康保険と後期高齢者医療制度加入者の医療費窓口負担免除措置も、2021年3月末で住民税課税世帯が終了となり、住民税非課税世帯においても同年12月で終了する方針が示されています。岩手県保険医協会では、毎年、通院している被災者を対象にアンケート調査を実施しており、今年で11回目となりました。毎回調査後は、被災者の生の声を伝えるべく記者発表を行うとともに、国をはじめ、県知事や県議会、市町村などに免除継続を訴えています。
 アンケートの配布は、会員である医療機関や自治体、自治会などを通じてお願いしていたのですが、数年前から被災者の住居が仮設住宅から災害公営住宅等に移行したことにより、自治会などにお願いすることが難しく、職員が約2万枚のハガキを持参し、現地でポストインや協力のお願いをしています。私もポストインしているさなかに、住民のみなさんと会ったときには一言でも話をするように心がけていますが、「毎回回答していますよ」「いつものアンケートね、ご苦労さん」などの声をかけてもらうこともあり、アンケートが定着してきていることを感じています。それ以外にも、ご自身やご家族の健康状態や、昔の地域の話をしてくれる人もいたりと、貴重な経験となっています。
 毎回、アンケートハガキの小さな記入欄に書ききれないほどの悲痛な声や負担免除への感謝の言葉などが多く寄せられています。現在免除となっている住民税非課税世帯のうち、6割超が、医療費負担が発生した場合、「通院できない」「通院回数を減らす」と回答しています。全国各地で災害があい次いでいますが、このアンケートで得た教訓は、災害時には、被災者が経済的事情にかかわらず受診できる環境や仕組みをつくることが重要であることです。被災者の孤独死や心のケアが課題となっているなか、医療費負担免除は、病気の早期発見、早期治療だけではなく、外出の機会や人とのふれあいなど、心身ともに健康な生活を送るための役割も担っています。ましてやコロナ禍だからこそ、より苦しい状況におかれている被災者の医療費負担免除は続けるべきです。

(民医連新聞 第1742号 2021年8月2日)

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