民医連新聞

2021年9月7日

あれから10年 私の3.11 ⑬備えが身を守る 宮城・訪問看護ステーションまつしま 岩渕 純子

 先日、震災から丸10年を目前にして福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が起きました。大きく揺れるなか、頭をよぎったのは東日本大震災の悲惨な光景()。揺れが一旦落ち着き、家族に真っ先にかけた言葉は「避難するよ!」でした。自宅にも津波がきた過去の経験が、避難という行動を迷わず選択させました。幸いにして、津波の心配はないとのテレビのニュースが流れ、ホッとしました。しかし、それもつかの間、東日本大震災の余震と聞き、「またか…」とがっかり肩を落としました。
 震災で学んだことの一つは、「自分のいのちは自分で守る」でした。ふり返ってみますと、それまでの私は看護師という職業柄「自分のことよりまずは困っている人を助けなければならない」という使命感のような感覚が強かったと思います。しかし、自分のいのちを大切にすることで、他人のいのちを守ることができる、という考え方が看護師や一般の中にも浸透していきました。
 訪問看護を利用し、自宅で療養している人たちには、一人で避難できない人もいます。そのような人でも、「身を守る」ために何が必要か。それは「日頃の備え」だと思うのです。安全確保のための身の回りの工夫、水や食料など必要な物資、ライフラインの確保方法、避難場所の確認と移動手段の確保、ご近所や地域の人に自分の存在を知ってもらうこと、そして心構え。私たち訪問看護師の役割は、利用者が万が一の時に備え、少しでも困らないよう事前の準備のお手伝いをすることです。揺れが強い地震が起きると、心配な利用者の顔が浮かびます。「停電はないか」「転んではないか」「怖がってはないか」など心配は尽きません。両者の不安が少しでも解消されるように、備える行動を教訓としていきたいと思います。
 地震のたびに思うのです。「地球は動き生きている。私たちも生きている」。ともに生きているのだと。自然に抵抗できるわけはなく、私たち人間が受け止めていくしかないのだと。
 最後になりましたが、震災当時はもちろん、10年間支援を続けていただいたみなさまに、心から感謝します。そして、今も復興道半ばのみなさんの一日も早い復興を願っています。
※松島医療生協では、職員3人をはじめ利用者や組合員も複数人、亡くなった。

(民医連新聞 第1744号 2021年9月6日)

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