民医連新聞

2021年9月7日

診察室から 正しい医療情報の伝達は「信頼」から

 コロナ禍になり、患者さんをはじめ非医療従事者との会話でさまざまな医療情報が飛び交うようになりました。情報源は「知人から聞いた」「テレビで見た」が多く、中には「ワクチンを打つと遺伝子が書き変えられる」などの「トンデモ」情報も混じっています。
 私には4歳の娘がいますが、出産・育児でも似た場面に遭遇します。子育てに関する情報は、知人の体験談やネット・SNSから入ってくることが多く、中にはエビデンスがないものや、明らかなデマもあります。「ワクチンは害だ」「ワクチンを打つと自閉症になる」と考える「反ワクチン」派の保護者もいるようで、医療従事者間でも問題視されています。
 そんなことを耳にした時、つい私たち医療従事者は「それは間違っている」と頭ごなしに否定したくなります。「なんて無知だ」と決めつけてしまうこともあります。しかし、それはかならずしも解決策に結びつかず、むしろ非医療従事者との溝を深くしてしまうのではないか、と心配しています。
 HPVワクチンに関するあるシンポジウムで、医療人類学者の磯野真穂氏は「経験したことがない場面でどの情報を頼りにするかは『誰を、どの組織を信頼しているか』に依存する」とのべていました。信頼する知人からの情報を、人は信じやすいとのことでした。
 医療従事者が情報を伝えたい時も、そこに「信頼関係」があるかどうかが大事ではないでしょうか。医学的に正しい情報でも、関係性や伝え方によっては全く受け入れられないことがあります。実際に私の体験ですが、産前産後や育児中は心身ともに疲弊し孤独を感じやすいものです。そんな時には、正論でも医療従事者の冷たい言い方に傷ついたり、反対にエビデンスがなくても温かい周囲の人の言葉に救われたりもしました。
 どうしたら「信頼関係」を築けるか―。それは実に難しく、私も日々苦心しています。相手の話に耳を傾け、誠実に、温かく、寄り添う態度で接することが大事ではないかと感じています。(岡井康葉、和歌山生協病院)

(民医連新聞 第1744号 2021年9月6日)

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