民医連新聞

2021年11月16日

相談室日誌 連載509 診断書必要と申請を拒否 生活保護窓口にSW配置を(岐阜)

 「生活保護を受けたいと市役所に話したら、働けないことを証明する診断書を書いてもらってくださいと言われた」。そう言って60代男性Aさんは、当院を訪れました。受診よりも前に事務からSWに声が掛かり、事情を聞きました。2年前、入院したことを機に仕事が続けられなくなり、生活保護の申請に行ったものの、65歳未満の稼働年齢であることを理由に断られました。その際、就労サポートにも案内されず、自身で仕事を探して一度は就労しました。しかし、身体的なきつさから仕事を続けることができず、生活苦で借金をしました。
 Aさんの了解のもと、生活相談員とSWが市役所へ生活保護申請に同行しました。窓口では「いままでに4回相談に来られていますが、すべて同じ説明をしています」と言われました。診断書がないので申請を受け付けることができないというのです。本来、申請を受け付けた上で、検診命令書を発行し公費負担で受診案内するか、医療要否意見書を医療機関に送り医療の必要性を確認するかをして審査します。診断書がないことは申請を受け付けない理由にはなりません。
 最終的には、診断書はないけれども、いま現在の手持ちが現金のみで、就労しようとしてもすぐに仕事は見つからない状況であること、求職をがんばる意思を伝え、申請することができました。Aさんが一人で申請に行ったときと書類の変化はありません。生活保護を申請する権利は誰にでもあるにもかかわらず、Aさんは年齢だけの基準で申請を受け付けてもらえずに、必要のなかった借金をすることになりました。借金に関しては、いまも弁護士と相談し対応しているところです。
 本来、生活保護窓口は申請を受け付ける場所です。受け付けた上で、審査し、承認するか否かの判断がなされます。相談窓口なのですから、来所した人の話を十分に聞き取り、申請に必要な手順の案内や書類の書き方を伝える役割を担います。
 Aさんの事例を通して、生活保護窓口へのSWの配置など、生活保護行政が本来の役割を発揮するための手だてが求められていると考えさせられました。

(民医連新聞 第1749号 2021年11月15日)

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