民医連新聞

2021年12月7日

相談室日誌 連載510 母親他界後の独居患者 地域とつながるきっかけに(長崎)

 今夏、当院に救急搬送されたAさんは70代の男性です。母親が他界した後は市営住宅で独り暮らしをしていました。いろいろな職業を経験しましたが、2020年ごろに交通事故に遭ってから離職し、以降は年金生活となりました。日々の生活は、食事は1週間に1回米を2合炊き、それ以外はカップラーメンや総菜などを3~4日に1回買い物に行く生活。市営住宅からの行きは徒歩(急な下り坂を1・4km)、帰りはタクシーを利用していました。なじみの店で酒を1杯だけ飲み、飲み仲間と歓談することが唯一の楽しみだったそうです。
 今回の入院の3~4日前くらいまでは、隣人が姿を確認していたそうですが、姿を見かけなくなったとのことで安否確認のため、隣人が警察へ連絡し室内へ入ったところ、トイレ内で倒れているAさんを発見しました。発汗多量、四肢拘縮(こうしゆく)し、全身に褥瘡(じよくそう)形成があり、すぐに救急車で当院に搬送され、入院となりました。
 Aさんは、身近に親族や協力者がおらず、入院や退院した後の生活に全般的な不安を持っていました。無料低額診療事業の利用を申請し、医療費の心配はなくなりましたが、保証人などの不安は残りました。
 「いつかはこうなると思っていたけどね…。どうしようもなくて…」とAさん。電話帳の記録を確認し、相談室から県外のいとこに連絡をとり、今後の相談にのってもらえるよう説得を重ね、何とか対応してくれることになりました。縁が途切れていた親族とのつながりもつくることができたのではないかと思います。Aさんは4カ月間のリハビリののちADL自立。生活家電の購入などにもかかわりながら退院調整を行い、自宅退院となる予定です。
 病院にほど近い市営住宅での事例でした。今回のことを機に地域の自治会長に話を聞く機会を得て、昨年から長崎民医連でとりくんできた生活相談会をこの地域で行うことができました。
 今後もこの相談会を継続し、今回のような事例を少しでも減らしていくことが、私たちの使命であると考えています。

(民医連新聞 第1750号 2021年12月6日・20日)

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