いつでも元気

2022年3月31日

青の森 緑の海

2022年1月 西表島・後良川河口

 日本の南端、台湾のすぐ隣に位置する西表島は不思議な島だ。宿を出た時は大雨だったのに、撮影地では快晴だったりする。海上の湿った大気と、標高500mほどだが3000m級の山岳にも匹敵する急峻な地形が、その天候をつくる。
 昨年、小笠原諸島の海底火山の噴火による軽石が沖縄に漂着し、1月にはトンガ沖の海底火山噴火による「津波」もあった。自然は人間の生命に配慮したりはしない。
 西表島でも1991年に震度5レベルの群発地震が発生した。台湾から鹿児島にかけて連なる南西諸島の南側には、長さ約1300㎞、深さ7500mにも及ぶ琉球海溝があり、付近の海底は年7㎝ずつ大陸プレートの下へと潜り込んでいる。大きな地震が今後も必ず起こるということだ。
 だが、これらは僕たちにとって脅威であると同時に、重要なメッセージとして受け取ることもできる。「人間は小さい存在」であり、だからこそ「日々を大切に生きよ」というメッセージである。
 マングローブの森を潤した雨があがり、虹がかかった一瞬を撮影した。遠くの山々は、短期間に隆起したこの島のダイナミックな歴史そのものだ。自然はただそこにあるのではない。人間がその気になって謙虚に言葉を聴き取れば、大切な気づきを与えてくれる。


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。

いつでも元気 2022.4 No.365

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