民医連新聞

2022年4月5日

ようこそ民医連へ 先輩からのメッセージ

 新入職員のみなさん、民医連にようこそ。先輩職員や共同組織のみなさんから職場や組織の紹介とともに、民医連のよさを体験を交えて語ってもらいました。

多職種一丸となって
静岡・浜松佐藤町診療所 水谷民奈(医師)

 全国の新入職員のみなさん、入職おめでとうございます!
 私が所長として勤務している浜松佐藤町診療所は、創立42年目になります。長年に渡り、外来や訪問診療などのプライマリ・ケアを実践してきました。現在は女性医師が多く、常勤・非常勤合わせてなんと5人もいます! デイケア、訪問看護、訪問介護、薬局、ケアプランセンターと連携をとり、多職種一丸となって、地域の患者・利用者のためにがんばっています。地域医療の経験を生かし、浜松医科大学の研修医や学生の実習を受け入れており、大学の講義(医学概論)も受け持っています。
 民医連でよかったことは、子どもたちが幼い頃、仕事と育児の両立が難しかった私に対して、夜間診療や拘束当番を免除してもらったことです。子どもが熱を出して保育園を休んだ時には、共同組織の方が世話をしてくれたので、本当に助かりました。民医連のさまざまな行事に子どもたちを連れていき、職員や地域の人びとと交流を深めることができて、彼らは心豊かに育ちました。今度は私が若い職員のみなさんをささえていきます。ともにがんばりましょう!

一人ひとりの力は大きい
京都民医連あすかい病院 宮川卓也(医師)

 当院は京都市内にある160床あまりの中規模病院で、一般病棟、緩和ケア病棟、回復期リハビリ病棟、地域包括ケア病棟があります。外来や在宅診療、透析なども行っています。
 病院で働いていると、外来や在宅↓入院急性期↓慢性期↓再び外来や在宅、あるいは緩和、と患者のさまざまなステージにかかわります。そのなかでは疾患のことだけでなく、患者の不安や不満、時には解決困難な社会的問題にも直面します。「民医連で働いてよかったな」と思う理由は、そのような問題を可視化し、分析し、同僚の職員たちといっしょに悩み、議論して立ち向かっていく風土があることです。これは新入職員のみなさんだけでなく、ベテラン職員にとっても大変なことです。しかし、このプロセスを通して、患者やその家族の生活をささえていくことができます。医療・介護という大きなシステムのなかで、役割を果たしてほしいと思います。
 「一人ひとりの力は小さい」とよく言われますが、人が足りないこの業界では「一人ひとりの力は本当に大きい」です。がんばってください。

大変な時こそ協力して
北海道・くろまつないブナの森診療所 大塚真由(看護師)

 入職したみなさん、おめでとうございます。当診療所は、町にある唯一の医療機関であり、救急の受け入れから外来、訪問診療、入院と地域の医療を幅広くになっています。周辺には施設も密集しており、認知症の人や高齢者が生活する施設だけでなく、児童養護施設や身体障害者施設もあり、子どもから大人まであらゆる年齢層の患者が受診します。小さな町だからこそ、地域とより密接なかかわりを持つことができ、身近に医療・介護を感じることができます。
 民医連で働きはじめて、高齢独居や認知症の進行で生活が破たんしていたり、貧困や家族と疎遠であるなど、さまざまな背景を抱える患者がいると知りました。ギリギリ保っていた生活が破たんした結果、体調を崩して救急搬送され、入院になるケースも少なくありません。そういった患者が、住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、他職種や施設と連携を取り、日々、医療・看護を提供しています。大変なこともありますが、そういう時こそチームで協力し合い、やりがいを持って働いています。
 新生活、慣れない環境で不安もあることと思いますが、抱え込まないでくださいね。みなさんのご活躍を祈っています。

民医連でひろがる視野
群馬・あおば薬局渋川店 髙宮栄佑(薬剤師)

 当薬局では、連携している北毛病院に多くの診療科があるため、内科、外科、精神科、小児科など、幅広い分野の処方せんの調剤を行っています。また健康サポート薬局として、地域の人により身近に感じてもらえる薬局になるよう心掛けています。調剤業務の他にも患者からの健康相談を受けたり、定期的に薬局内で共同組織の班会を開き、地域の人と薬や健康に関する勉強会などを行ったりしています。
 入職後、さまざまな研修に参加させてもらいましたが、特に衝撃を受けたのは、「薬害根絶デー」への参加でした。薬害という言葉は知っていたものの、実際に被害にあった人たちの生の声を聴くことは、民医連で働かなければできなかったかもしれません。
 薬剤師の仕事は患者に正しく薬を使用してもらい、治療のサポートをすることが主なものだと思います。しかし、なかには経済的、社会的な理由で治療を受けられない人も多くいます。そのような人に、どのようにアプローチしていくのか、ということを考えることも必要です。治療できていない人にも、より目を向けられるようになったのは、民医連で働いたからではないかと思います。

利用者の言葉が力に
島根・ひかわ医療生協 土田寿絵(介護福祉士)

 ひかわ医療生活協同組合は、斐川生協病院を中心に、サービス付き高齢者向け住宅や在宅サービス事業を展開しています。私は定期巡回事業と高齢者住宅の責任者で、民医連歴17年になります。日々、地域の利用者のくらしをささえるために「断らない」「すぐに対応」「次につなげる」ことを目標に掲げ、奮闘しています。
 私が「民医連ってすごい」と感じたのは、入職2年目の時です。ある利用者の病状が進行し、不安やもどかしさ、いら立ちなどさまざまな感情と葛藤していました。そのため、「まず、本人の気持ちをしっかり受け止めよう」と話しあい、職員間で協力して話を聞く時間をつくり出すことに。「こっちは大丈夫だから、そのまま話して」など、声をかけあいながら利用者に寄り添い続けました。結果、利用者から「私の言うことをわかってもらえてうれしい、ここにいると安心する」という言葉をもらい、自分にとって大きな力になったことを覚えています。
 職種関係なく、みんなで悩み考え、一人の利用者のくらしをささえる。こうした実践ができるのは民医連だからこそだと思います。今後も民医連の良さ・強みを生かし、学びながら、仲間といっしょに地域の人びとのくらしをささえ続けたいと思います。

SDHの視点で退院支援
福井・光陽生協病院 寺島千春(理学療法士)

 当院は地域包括ケア病棟のみの病院で、民医連内外の施設と連携しながら地域に根ざした医療を行っています。大病院や整形外科からの転院を受け入れることも多く、退院調整が困難な患者の紹介も少なからずあります。当院のセラピストは理学療法士5人、作業療法士2人、言語聴覚士2人で、パートや育児短時間勤務の人も働きやすい職場をめざしています。
 印象に残っている患者がいます。40代男性、アルコール依存症で、過去の入院時には暴言などでトラブルもあり、近寄りがたい人でした。しかし、くり返す転倒や低栄養、脊柱管狭窄(きょうさく)症の悪化などで徐々にADL(日常生活動作)が低下、独居生活が困難に。その後の長期入院でリハビリを行い、アルコールが抜け、普通に会話できる優しい印象になった彼は、学生時代に不登校になったことなど、少しずつ自分の過去も話してくれました。
 民医連はSDH(健康の社会的決定要因)という視点を大事にしています。この視点で、彼がさまざまな問題を抱えることになった要因を掘り下げていくと、たくさんの気づきがありました。彼の退院調整は複雑な問題が絡み、非常に困難でしたが、市や地域の職員も交えたカンファレンスを経て退院できました。偏見なく適切な対応ができるSDHの視点を、新入職員のみなさんもぜひ感じてください。

民医連と連携しいのち救う
福岡・ありあけ健康友の会 堤和則(共同組織)

 当会は1973年に親仁会健康友の会として発足しました。1996年に地域全体を視野に入れた組織をめざして今の名称に。現在、会員1万616世帯、7支部で大牟田市を中心に活動しています。
 大牟田市は炭坑で栄えたまちですが、石炭産業の斜陽化で多くの労働者が一方的に解雇され、争議になりました。その争議をたたかった多くの人たちが親仁会と友の会発展の原動力となりました。私たちはこの先輩たちの意志を受け継ぎ「安心して住み続けられるまちづくり」にとりくんでいます。
 民医連の共同組織として誇りと喜びを感じることはたくさんあります。ある独居の会員は脳卒中で倒れ、救急車で急性期病院に運ばれ入院。ひと月ほどたって娘から電話があり、退院を促されているとのことでした。私は親仁会の米の山病院への転院をすすめました。さらにひと月ほどして、本人からたどたどしい言葉で入院費用の相談があり、即座に無料低額診療事業について病院に相談するようすすめました。結果、職員が動いて生活保護利用に結びつき、退院後も安心して生活できています。一時期は死ぬことも考えていたと聞き、民医連の親仁会と友の会が連携して一人の会員を救う力になったことを、心からうれしく思っています。

(民医連新聞 第1757号 2022年4月4日)

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