民医連新聞

2022年7月5日

にじのかけはし 第7回 医療機関での困りごと(1)(パートナーについて) 文:吉田絵理子

 LGBTの人は医療機関への受診時、男女二元論や異性愛が前提となっていることで、いろいろな困りごとに遭遇することがあります。レズビアン・ゲイ・バイセクシュアルの人とトランスジェンダーの人で、その内容は異なります。今回は前者についてお伝えします。
 コロナ禍では、同居している人が新型コロナウイルスに感染した際に、保健所や職場などへその情報を伝える必要が生じました。同性のパートナーといっしょに住んでいることを、周囲にまったく伝えていない人は少なくありません。自分が予期せぬタイミングでそのことを明かさなければならず、恐怖を感じた人がいました。
 また患者さんの希望する人が、病状説明に同席したり、手術の同意書にサインができたり、入院中に面会したりする権利は守られているでしょうか。病院ごとの独自のルールにより、本人の希望を伝えても同性のパートナーの面会などが断られるケースがあります。長年連れ添ったパートナーが、患者さんの法律上の家族に拒絶され、看取りの際に病室に入れてもらえなかったという、とても残酷なことも実際に起こっています。
 産婦人科や泌尿器科の問診票で、性交渉について記載する欄がある場合、同性同士の性交渉についても記載できるようになっていますか? 問診の際に、同性同士の性交渉についても答えやすいように聞く工夫をしているでしょうか? ある人は産婦人科に受診した際に、レズビアンであることを伝えたところ「そんな不道徳な生き方はよくない」と医師から諭されたそうです。
 私が医療機関に受診した際には、パートナーと住んでいると伝えたところ、看護師がパートナーのことを「旦那さん」と置き換えて話がすすみ、「相手は女性です」と言い出すことはできませんでした。
 当事者はこうした困りごとに声をあげにくく、スタッフは気づかずに終わることも多いでしょう。少しアンテナを立てるだけで、変えていけることがあります。「無差別・平等の医療をめざす民医連では、パートナーのことも隠さず安心して話せる」と患者さんから思ってもらえるような組織を、みなさんといっしょにつくっていきたいです。


よしだえりこ:神奈川・川崎協同病院の医師。1979年生まれ。LGBTの当事者として、医療・福祉の現場で啓発活動をしている。

(民医連新聞 第1763号 2022年7月4日)

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