民医連新聞

2022年7月19日

医師の子育てから見えた すべての人が働きやすい職場 京都民医連あすかい病院

 45期運動方針では、ジェンダー平等の実現や、医師の働き方改革の必要性を強調しました。京都民医連あすかい病院では、週4勤務の常勤制度や保育・介護での時短勤務、男性の育児休暇の推進など、働きやすい医局づくりをすすめています。制度を利用した子育て世代の医師の対談です。(稲原真一記者)

中川 実際に子育てをしながら働いていて、あすかい病院の働きやすさはどうですか?

木原 子育ては子どもの送り迎えや急病など、「時間とのたたかい」「急な予定変更」がありますが、そうした問題にスタッフや医局がよく配慮してくれます。時間通りに職場を出られる準備や急な休みの代診もすぐに対応してくれるので、安心して働けています。

中川 不便がないか心配もあったので、その言葉が聞けて良かったです。細尾さんは昨年、初めての出産でしたが、どうですか?

細尾 コロナ禍で急な保育所の休園などもあり、院内保育所(臨時保育)があって非常に助かりました。また代診の調整を医局事務がしてくれるのもありがたいです。以前いた病院では、代診を自分で他の医師にお願いする必要があり、精神的にも負担でした。

木原 私は院内保育所(産休・育休明け保育など)のあることが、あすかい病院を選んだ大きな理由です。保育士も医療現場の事情をよく理解しているので、安心して預けられました。いまも妊娠や出産で退職せざるを得ない病院はあります。妊娠中に雇ってくれる病院は少なく、子育てが研修などキャリア形成の時期に重なる場合、両立は難しいと感じます。

細尾 私も患者の急変と子どもの発熱が重なり、大変な時期がありました。その時も周りのスタッフや上級医が気づき、調整やフォローがあって助かりました。

中川 病児保育所は当院にはありませんが、外部の保育所を利用できるようにしてきました。みなさん利用されているようですね。

経験から価値観を共有

中川 これまで医療界は、男性の長時間労働で維持されてきた側面があります。だからこそ、男性の働き方も変える必要があります。

細尾 私の夫は大学院の研究医ですが、育児はできるだけ分担しています。しかし、本人に育児をしたい意思があっても、職場からは以前と変わらない働き方が求められ、矛盾を感じています。

宮川 私は昨年、初めて育休を取りました。毎日ミルクをあげて、オムツを換えて…という記憶しかありませんが、経験を通じて価値観の共有や、子育てについて考えるいい機会になりました。ただ、育休が終わっても育児は続くのに、急に元の仕事に戻ることへの違和感や不安がありました。

中川 以前は宮川さんも遅くまで仕事をしていましたが、最近は本当に帰宅が早くなりましたね。また話を聞いて、男性の職場復帰にも配慮が必要だと気づきました。

山本 私は育児にかかわりたい気持ちがありつつも、以前の職場では育休が取れませんでした。宮川さんが育休を取ったと聞き、それならと妻の入院中から時短勤務を利用し、第3子の出産時に初めて育休を取りました。念願の育児にかかわることができ、貴重な期間になりました。

中川 3人の子育ては大変ではなかったですか?

山本 夫婦で手分けしながらでしたが本当に大変で、夫婦で医師の家庭はどうしているのかと思いました。女性医師の大変さも実感し、産褥(さんじょく)期の女性のつらさも間近で見て、理解がすすみました。

誰もが安心できる職場へ

中川 みなさんの経験から、働きやすい職場にするには、何が必要だと思いますか?

宮川 すべての職員に産休や育休などがあることを前提にする必要があるでしょう。その上で、やはり一番必要なのはマンパワー。余裕がなければ働き方は改善されず、職場の雰囲気はますます悪くなります。人手が足りない場合は、何を大切にするか議論の上、一時的な診療の縮小なども検討しなくてはならないと思います。

中川 医療界は医師や看護師の不足が長時間労働を招き、離職につながっています。まずはこれを改善すべきです。お互いの事情を理解し、ささえあうのが当たり前の文化をつくることも大切だと思います。親の介護が必要な世代もあります。職員同士が、それぞれの事情を受け止め、働き続けられる職場が必要です。

木原 あすかい病院のように、家庭でなにかあった時、ためらわずに相談できて対応してくれる環境でこそ、心理的に安全で安心して働けるのだと思います。

中川 一人ひとりを大切にし、なんでも話せる職場にしていきたいですね。もっと働きやすい職場をめざしていくので、これからも意見を聞かせてください。

子育ては私たちを成長させてくれる パパドクターの感想が素敵!

 育児休暇取得を女性だけでなく、男性職員にもすすめてきたあすかい病院院長の中川裕美子さんに聞きました。

 私も30年前に妊娠・出産を経験しました。当時は育児休業制度がはじまったばかりで、民医連のなかでも制度への理解は低かったように思います。全般に医療界は慢性的な医師不足のもと、男性医師の長時間労働によってささえられてきた面が大きく、出産や育児によるブランクがある女性医師の地位は低く、発言権もあまりありませんでした。私はこんな世の中を変えたいと思うようになり、まずは女性医師・職員の育休や時短制度の積極活用をよびかけました。
 しかし、ささえる側の男性職員、とりわけ男性医師の働き方を変えないことには、真のジェンダー平等は実現しないことに気がつきました。
 男性医師に育児にかかわってもらうことで、「本当に育児は大変。女性医師は本当にがんばっていますね」「マルチタスクをこなす能力が必要ですね」「医療といっしょでチームワークが必要ですね」、とすばらしい感想をもらいました。
 しっかり育児に向き合って、育児が落ち着けば、また当直や往診待機にも入ってささえる側にまわり、みんなで育児と職場をささえていけたらなあ、と思います。
 もちろん育児以外にも介護などいろいろな個別の事情をみんなもっていますが、いたわり合って働ける職場づくり、「ずっとここにいたい。仕事を続けたい」と思える職場づくりをしていきたいです。


京都民医連あすかい病院

 全165床の中小病院。入院機能は内科急性期、地域包括ケア、回復期リハビリ、緩和ケアを有する。

(民医連新聞 第1764号 2022年7月18日)

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