くすりの話

2022年7月29日

くすりの話 
睡眠薬

執筆/山本 雅樹(愛媛・松山ハロー薬局・薬剤師)
監修/金田 早苗(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた薬の質問に薬剤師がお答えします。
 今回は睡眠薬についてです。

 みなさんは十分な睡眠をとれていますか?
 一般的に大人の睡眠は1日7~8時間ほどですが、新生児は10~18時間ととても長いです。昨年誕生した私の娘も、本当にミルクを飲む以外は寝ています。「寝る子は育つ」ですね。
 しかし大人になると、さまざまな原因から不眠症になる人がいます。不眠症には4つのタイプがあり、①寝つきが悪い「入眠困難」、②途中で起きてしまう「中途覚醒」、③早く目覚めてしまう「早期覚醒」、④熟睡した感じがしない「熟眠障害」に分けられます。定期的な運動や寝室の環境整備などで改善しない場合、医師はそのタイプを見極めて睡眠薬を処方します。

◇睡眠薬の種類と特徴

 睡眠薬を大きく4つに分類して紹介します。
①ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬
 (トリアゾラム、ニトラゼパム、クアゼパムなど)
 脳の興奮を抑えることで眠りやすくします。薬の効く時間が短いものは「入眠困難」に使用され、薬の効く時間が中間から長いものは「中途覚醒」「早期覚醒」に使用されます。
 前者は服用後の記憶がないことや、薬を中断すると以前より不眠症状がひどくなるなどの副作用があります。後者は夜間のトイレ移動などの際にふらつきや転倒、起床後もぼーっとしたり眠気が続いたりする副作用があります。
②非ベンゾジアゼピン受容体作動薬
 (ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン)
 ①よりも筋弛緩作用が少なく、高齢者にも多く使用されます。①と比較して頻度は高くないものの、服用後の記憶がないことや、中断によって以前より不眠症状がひどくなることなどに注意が必要です。一部の薬は口腔内に苦みを生じるものがあります。
③メラトニン受容体作動薬
 (ラメルテオン、メラトニン)
 眠りや体内時計に関わるメラトニンというホルモンの働きを助けて、眠りやすくします。メラトニンは夜10時以降に増加し始め、朝4時頃にピークを迎えたのち徐々に減っていきます。このメラトニンの分泌を促して生理的睡眠へ誘導するため、昼夜逆転など睡眠リズムのずれに対して効果的です。①②より筋弛緩作用や記憶障害、依存性が少なく安全性が高い反面、効果が弱いところが難点です。
④オレキシン受容体拮抗薬
 (スボレキサント、レンボレキサント)
 体を目覚めさせるオレキシンというホルモンの働きを抑えることで、眠りやすくします。「中途覚醒」「早期覚醒」「熟眠障害」に使用されます。最近では①②からの切り替えが多くなっている印象です。レム睡眠が増えて悪夢を見やすくなったり、他の薬や食事との相互作用に注意が必要です。
 今回は大まかな睡眠薬の特徴を説明しました。服用時の注意や副作用についてなど、ご不明な点は医師や薬剤師にご相談ください。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2022.8 No.369

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