民医連新聞

2022年9月6日

にじのかけはし 第11回 結婚の自由をすべての人に訴訟(1) 文:吉田絵理子

 私は女性のパートナーといっしょに暮らしています。互いの家族や友人に紹介しあい、家族として生活していますが、同性なので法律上の婚姻関係を結べず、いざという時の備えが必要となります。
 例えば、急に倒れた時のため、財布の健康保険証の上にパートナーの連絡先を書いた緊急連絡先カードを入れ、常に持ち歩いています。また意思表示ができなくなった時のために、パートナーを医療代理人に指定する公正証書を作成し、さまざまな手続きができるよう任意後見の契約を交わしました。今は一軒家にいっしょに住んでいますが、突然私が亡くなったら、パートナーには何の相続権もありません。そのため遺産を相続できるよう、遺言書を公正証書で作成しました。こうした準備には時間やお金がかかる上、配偶者としての税金控除などは一切受けられません。その他にも、もしどちらかが生んだ子どもを長年いっしょに育てていても、パートナーは親権を得ることができないといった課題もあります。こうした経験から、婚姻届を出すだけで得られる権利がいかに多いかを学びました。
 2019年には、同性どうしが結婚できないのは婚姻の自由を保障する憲法24条や、法の下の平等を定めた憲法14条に反するとし、同性カップルが国に賠償を求める裁判(結婚の自由をすべての人に訴訟)が、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡で始まりました。昨年3月には、札幌地裁で初めて、同性婚が認められないのは憲法14条に反するという歴史的な違憲判決が出ました。
 私は訴訟が始まったとき、「この裁判で負けてしまったら、日本でパートナーと結婚できる未来はやってこないだろう」と感じ、裁判がすすむのが怖いという気持ちがありました。札幌地裁の違憲判決が出た時には動揺してしまい、1週間ほどひどく涙もろくなりました。パートナーと結婚し、周囲の人からおめでとうと言ってもらえるような未来は自分にはないと思って長年暮らしてきました。そんななか「日本で結婚できる可能性がゼロではない」と感じた時に、自分の気持ちをかなり抑圧してきたのだと知りました。同時に、この判決に反発が生じ、差別がより強まるのではないかという恐れも抱きました。


よしだえりこ:神奈川・川崎協同病院の医師。1979年生まれ。LGBTの当事者として、医療・福祉の現場で啓発活動をしている。

(民医連新聞 第1767号 2022年9月5日)

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