民医連新聞

2022年10月4日

相談室日誌 連載527 独居、要介護で認知症の対応 地域包括ケアシステムの課題(福井)

 現在、厚生労働省は、2025年をめどに住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域包括ケアシステムの構築を推進しています。
 60代女性のAさんは、同居の父親が亡くなり、頼れる親戚がいなくなりました。認知症があり、自立促進支援センターの訪問(月に1回)、地域包括支援センターの訪問(月に1回)、認知症疾患医療センターからのアウトリーチ、宅配弁当サービス(昼・夜)、福祉サービス利用援助事業による金銭管理と書類管理、デイサービス(週に入浴2回)、訪問介護(毎日1回訪問)などを利用しながら、独居生活を続けてきました。
 このような状況のなか、アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症の診断を受け、見守りや声掛けがないと食事をすることや身支度が難しい状況となり、夜間の様子の確認のためにも当ショートステイの利用が始まりました。
 利用開始から約2カ月がたちますが、利用が長くなればなるほど、環境の変化による混乱が想定され、自宅へ戻ることが難しく感じます。Aさん本人も「自宅は不安なので…ここ(施設)にいます」と言います。
 一方で、ショートステイは利用できる日数に限りがあるので、本人の希望どおり利用できる訳ではありません。
 できる限り本人の思いを尊重し、地域の社会資源のなかで安心してその人らしく過ごせる居場所を探すことが、課題であると感じています。特に独居で要介護状態、また認知症高齢者となった場合の受け皿の整備がまだまだ足りないように思います。
 国が掲げている地域包括ケアシステムは、国の責任を市町村に丸投げした無責任なものだと感じています。
 さらに、このコロナ禍では、地域で顔の見える繋がりや交流の機会の減少などの問題も大きく、地域包括ケアシステムの実現がさらに困難だと感じます。
 民医連職員として、現場の声や困難事例を自治体や国に届けていくことで、より良い地域包括ケアシステムの実現をめざしていきたいと思います。

(民医連新聞 第1769号 2022年10月3日)

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