民医連新聞

2022年10月18日

相談室日誌 連載528 車使用で保護廃止処分 利用者の権利侵害許さない(和歌山)

 70代のAさんと出会ったのは、2020年の5月でした。脊柱管狭窄(きょうさく)症で足のしびれが強く、歩行も困難な状態となり、当院整形外科を受診しました。持病に糖尿病もあり、当然医療の継続が必要な状態でしたが、5月に生活保護が廃止されてしまっていました。
 Aさんに事情を聴くと、「生活支援課に車に乗ったところを4回見つかり、指導にも従わないので廃止にされた」と言います。しかし、保護が廃止されたためお金もなく、通院もできず、知人にお金を借りて、知人の家に寝泊まりさせてもらっている状態でした。
 厚生労働省は、生活保護利用者が車を保有することも、使用することも認めていません。一部身体に障害がある人などに保有と使用を認めているだけです。
 今回のAさんの事例を知った時、「車の使用で医療が必要な方や保護基準以下の生活状態の方に対し、保護廃止はないだろう」と疑問に思いました。まず、Aさんに同行し、生活支援課と話し合いました。しかし保護廃止は覆りません。次に保護廃止に至った経緯を知るために、ケース記録を情報公開し確かめました。すると、車の使用4回のうち1回目は受診のため、2回目は保護課に呼び出されたため、3回目は遊技場への使用、4回目は運転していないとわかりました。そこで生活保護を再申請後、2人で話し合い、不服審査請求を行いました。私はAさんの審査請求代理人ということで支援をしました。
 あれから2年が過ぎた今年の7月29日、和歌山県福祉保健部長による裁決結果が私の手元に届きました。主文「本件処分を取り消す」とのことでした。Aさんと私が主張したように、本件処分が違法で不当な処分と認められたのです。早速Aさんに報告の電話を入れましたが、この2年間で脳梗塞を2回患ったと聞きました。
 私はAさんの事例以来、生活保護利用者の車の使用は認められるべきだと思っています。この思いは、今年に入り「生活保護利用者の車の運転を日常的に認めよ」という市社保協の運動課題になりました。今後も生活保護利用者の権利と人権を守るたたかいを続けたいと思います。
 全国のSWのみなさん「生活保護利用者の車の運転を日常的に認めよ」の情報をください。
eijihase0825@yahoo.co.jp

(民医連新聞 第1770号 2022年10月17日)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ