くすりの話

2023年1月31日

くすりの話 
キノコと免疫力

執筆/藤竿 伊知郎(外苑企画商事・薬剤師)
監修/金田 早苗(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた薬の質問に薬剤師がお答えします。
 今回は「キノコと免疫力」についてです。

 2000年代の前半、ブラジル原産のキノコ「アガリクス」が注目されました。免疫力を高め、がんの予防や治療に効果があるとして1990年代末から使用が増え、ピーク時の販売額は年間650億円と推定されています。学者・研究機関の報告や患者の体験例を紹介した書籍と連動して売り出すのが、宣伝の定石となっていました。
 このブームを静めたのは、政府の取り締まりです。2005年、『即効性アガリクスで末期ガン消滅!』などの本を出していた史輝出版の関係者が薬事法違反で逮捕されました。本に記載された「2カ月でガンが消えた」「抗がん剤の副作用が止まった」などの証言は、ライターがねつ造したものだと発覚。書籍は「未承認医薬品の広告・販売」にあたるとされました。
 キノコのがんに対する効能は、試験管内や動物実験で認められていますが、臨床試験では実証されていません。がん細胞は免疫細胞の攻撃を避ける仕組みを持っているため、免疫機能を活性化しただけでは効果を期待できません。
 かつて販売されていたキノコ由来の医薬品も市場から消えました。カワラタケ(サルノコシカケ科)から製造した「クレスチン」は1980年代には大型商品となりましたが、薬効再評価により使用が減少し、2017年に販売を終了。シイタケから製造した「レンチナン」も18年に販売を終了しています。

キノコ由来のサプリメント

 今も販売されているキノコ由来のサプリメントには、怪しい製品があります。消費者庁は2022年11月、「糖鎖機能性食品G」などを販売する一般社団法人「免研アソシエイツ協会」に対し、景品表示法に違反する行為(優良誤認)が認められたとして、表示改善と再発防止を命じました。
 同協会はチラシに「難病改善に!!糖鎖の重要性」「こんな方へおススメ 現在ガンを患っておられる方…」などと記載。表示の裏付けとなる合理的な根拠を求めた消費者庁に対し、十分な資料を提出できませんでした。同協会とその代表は12月、薬機法違反(未承認医薬品の広告・販売)の疑いで大阪府警から書類送検されています。
 がん患者の不安につけ込む悪徳商法は、誇大広告で処分するだけでなく、未承認医薬品の販売として厳しく取り締まるべきです。
 高いお金を払って怪しいキノコ製品を買うより、栄養豊富なキノコを使った食事を楽しむことをおすすめします。

薬機法…旧薬事法。正式名は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2023.2 No.375

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