民医連新聞

2023年1月24日

私がここにいるワケ 相手に共感しニーズくみ取るカウンセリング 岡山・林精神医学研究所 野﨑 詩織さん 臨床心理士

 民医連で働く多職種のみなさんに、その思いを聞くシリーズ3回目は、岡山・林精神医学研究所・岡山EAPカウンセリングルームで働く臨床心理士、野﨑詩織さんです。(長野典右記者)

 「もともと自分が話をするよりも聞くタイプだと思っています」と野﨑さん。学生時代から人の話を聞くことは好きだったことに加え、高校生世代を取り巻く問題をリアルに取り上げたテレビドラマに関心をもったことで、教育現場のカウンセラーをめざしました。そのためにはまずは医療機関で経験を積んでからと考え、林精神医学研究所に入職し、現在13年目。岡山EAPカウンセリングルームで働いています。

■組織で働く従業員の支援

 EAPとは「従業員援助プログラム」。社員やその家族(2親等以内)が、個人的な悩みや心配ごとを、専門のカウンセラーに無料で相談できるプログラムのことです。2003年4月に林道倫精神科神経科病院内に企業のメンタルヘルス部門として開設しました。
 2014年の改正労働安全衛生法で、50人以上の従業員のいる法人では、ストレスチェックが義務づけられています。蓄積されたデータの分析を行い、ストレスチェックの仕組みづくり、必要なカウンセリングを行っています。

■働かせ方も問題

 コロナ禍、契約先の企業では、テレワークによるストレス、対面でないなかでの人間関係、感染が気になり公共交通機関が利用できない、などの相談が多く寄せられました。医療の現場では、新型コロナウイルスのクラスターが発生し、少ない体制で外来や病棟を回さなければならないストレスや感染への不安で、面談の件数が増えました。クラスター対応した職員の面談などのサポートを行い、聞かれた声や業務改善に関することは管理部にも報告し、少しでもいきいきと働けるよう努めています。
 ストレスチェックの結果を返すだけで、具体的な改善につながっていないことも。労働者の働かせ方は契約先の企業文化もあり、どこまで踏み込んで提案できるのか悩みどころも多くあります。従業員50人以下の零細企業の職場にも、ストレスチェックの仕組みを浸透させて、メンタルヘルスの意識を高めていく必要があります。日頃からストレス対処やラインケアに関する研修、ストレスチェックの報告をていねいに行うなど、産業領域で働く臨床心理士としてできることにとりくんでいます。

■病院と連携し

 同カウンセリングルームは病院に併設していることが強みです。EAPでの相談で、医療機関の受診が必要と判断された場合、スムーズに医療機関につなげ、相談を担当したスタッフが医療機関でもカウンセリングを行います。医療スタッフと連携すると同時に、本人の許可を得て職場にも病状や治療方針を伝え、従業員の現状を理解してもらうことで必要な配慮や対応ができます。従業員と企業、医療をつなぐ役割を担い、受診前から終結までトータルアシストとして寄り添うことができます。
 「カウンセリングで大切にしていることは、共感し、相手のニーズや価値感をくみ取り、クライエントの選択を尊重すること」と野﨑さん。相談業務では、仕事やプライベートなことまで、さまざまな相談が寄せられるなかで、多くの症例や自分の人生経験すべてが役に立つと考えています。

■全国の仲間と交流を

 今後の抱負について、「臨床心理士としての技術の研さんはもちろん、新型コロナウイルスの流行、ハラスメント法の施行、働き方改革など社会情勢の変化や新しく取り入れられる制度などにも意識を向けた勉強、患者や企業を見立てる力をさらに深めたい」と語ります。また、「民医連で働く全国の臨床心理士で悩みや各地での実践を交流できる、職種のつながりの機会があれば」と語りました。

(民医連新聞 第1775号 2023年1月23日)

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