くすりの話

2023年4月28日

くすりの話 訪問薬剤管理指導

執筆/本樫 寿裕(愛知・わかば薬局大高店・薬剤師)
監修/金田 早苗(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた薬の質問に薬剤師がお答えします。
 今回は訪問薬剤管理指導についてです。

 「訪問薬剤管理指導」とは病院への通院が困難な患者さんに対し、薬剤師がご自宅や施設に薬を届けたり、服薬を援助することを言います。
 訪問薬剤管理指導は、利用する保険によって2つに分かれます。要介護認定を受けている方は介護保険の「居宅療養管理指導」、それ以外の方は医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導」になります。2つの名称は異なりますが、内容は同じです。
 薬剤師は患者さんのご自宅や施設を訪問することで、実際の生活や介護の状況を知ることができます。薬の飲み忘れ・飲み間違いを防ぐためのアドバイスや工夫、患者さんが使っている健康食品・市販薬との飲み合わせのチェックなどを行います。直接訪問することで患者さんの体調変化に気づきやすくなり、副作用の早期発見にもつながります。
 訪問した際に得られた情報は、医師やケアマネジャーなど医療・介護従事者と共有されます。その情報をもとに、薬剤師は薬の一包化や飲みやすい形態への変更などを医師に提案することもあります。また、ケアマネジャーなど介護従事者に対して、薬学的な見地から注意やアドバイスを行います。

ますます期待される役割

 最近、注目されているのは在宅緩和ケアへの取り組みです。近年は病院の緩和ケア病棟も増えてきましたが、患者さんの「最期は住み慣れた家で…」という思いを尊重してご自宅で看取るケースも増加しています。病院とは異なる限られた医療資源の中で、最期まで自分らしい生活を送っていただくために、薬剤師が薬物療法のコーディネーターとしての役割を発揮しています。
 今後、期待される取り組みとして「医療的ケア児」への対応があります。NICU(新生児特定集中治療室)などに長期間入院した後、自宅で引き続き人工呼吸器や経管栄養、たんの吸引などの医療的ケアを必要とする子どもたちがいます。全国に約2万人と推計されており、10年前のおよそ2倍です。
 薬の投与量や副作用、意思疎通が難しい子どもへの対応など、専門的な知識や技術を持つ薬剤師の積極的な関与が求められています。
 薬剤師がご自宅や施設に訪問する意義やメリットは大きいと考えます。在宅療養の服薬について心配なことや困っていることがありましたら、普段ご利用されている薬局にご相談ください。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2023.5 No.378

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