民医連新聞

2004年2月16日

安全・安心の医療をもとめて(18) 東京民医連

診療所で相互評価・自己評価 “社会的標準(スタンダード)に照らそう”

 「自己評価からはじめ、医療の安全性・質の向上を実現しよう」を重点課題にかかげた東京民医連では「自己 評価マニュアル」をつくり、全事業所に実施を提起しました。中でも診療所では、自己評価をもとに地域ブロックごとに相互評価(ブロック評価)をすること に。1月24日、大田病院附属うのき診療所(城南医療福祉協会)での、相互評価(ブロック評価)を取材しました。(小林裕子記者)

 うのき診療所は、常勤職員七人、一日平均患者数六八人、デイケア併設の診療所。菊地正博事務長・工藤幸江看護師 長の立ち会いで、西南ブロックの「ブロック評価チーム」を受け入れました。チームは、高田満雄さん(薬剤師)、竹村枝美子さん(看護師)と関雅之さん(ブ ロック事務局)。技術部門と事務部門に分かれ、点検項目に沿って作業に入りました。
 技術部門の点検は、まず薬品の保管、カルテの記録から。つづいて診療室や処置室を巡り、機器類の整備・滅菌、廃棄物処理の状況などを点検。事務部門は、 経営帳票や会議録をもとに菊地事務長から聞き取りしました。
 約二時間後、講評が始まりました。
 高田さんは「劇薬類はひとまとめに。向精神薬・ペンタジンの現物があるなら、不使用でもときどき確認を。調剤薬局から疑義照会があったとき、薬局名はも ちろん、薬剤師の名前、時刻、受けた職員名も書いて」。「内視鏡は、一人の検査終了のたびに、薬液に漬ける方法で消毒を」と、洗浄器を導入した同ブロック 内の経験を紹介しました。
 竹村さんは「カルテからはきちんとした医療管理がうかがえました。限られたスペースを整頓し工夫して使ってます。でも、診察室と通路の仕切りがカーテン でいいか、医療廃棄物の捨て方など、もう一度話し合っては?」。関さんも「診療所が小さくても、組織図をつくり職務を考えていけば、『何でも事務長に』で ない役割分担が可能」と提案。まとめは後日作られます。

 今回の東京民医連の提起は「診療所も外部評価を受けることが必要では?」と、方法を探っていた菊地事務長にとって、タイムリーでした。また、所長は「綱領のいう“親切な医療”は、民医連だけのものじゃない」が持論の大学病院経験者。積極的に自己評価にとりくみました。
 提起と自己評価表は、二度にわたって職員会議で話し合いました。事前に所長・事務長・看護師長が、自己評価表を採点、会議の「たたき台」にしました。全 職員会議では、どんどん具体的な話が出て、すぐできる改善策も生まれました。
 「診察待ちの間、再来の患者さんが書ける問診票をつくろう」「変更が多い医師体制はカレンダーに書き込み、全職員が患者さんに説明できるようにしよう」 「患者さんからの投書箱を作ろう」…。投書箱はその数日後、事務長が指示を出す前に事務職員が作っていました。職員も積極的でした。
 一方、菊地事務長は「ブロック内の二~三割」が目標になっているブロック評価の対象になったことに「何でうちが?」とも思いました。「共同組織との関 係、医療・福祉宣言づくり、マニュアル整備の遅れ、言われなくても自覚している弱点もあったので、たいへんだ」と。
 でも、半日がかりのブロック評価を終え、「指摘の中には、考えてもいなかった点がありました。こつこつ改善していかなければ」。工藤看護師長も「竹村さ んと思わぬ交流ができて良かった。処方の疑義照会など、薬剤師からの指摘は初めて。内視鏡の消毒は、気になって調べていたところでした。事業所以外の視点 は大切です」。
 関さんは「ブロックとしては、相互チェックができる人を増やすことや、診療所間の交流も意識して評価チームを組織しています。自己評価がきっかけで、全 職員で改善にとりくんだ診療所もいくつかある」と話しました。

 東京民医連の提起は、「日常の医療・福祉活動を、社会的スタンダードと民医連の方針に照らして点検し、その水準 に達しない部分を改善しよう」というもの。社会的スタンダードとは、医療機能評価機構、行政、職能・業種団体が示している基準、民医連の自己点検基準、 (川崎の)外部評価委員会の指摘などです。診療所の評価基準は「全日本民医連診療所ミニマム」の基本に、都医師会の『診療所・自己機能評価の手引き』を加 えたもの。また、改善の手続きを管理者集団の団結と全職員の認識共有のもとですすめることもねらいです。
 このとりくみで、診療所・保険薬局・介護事業所については、ブロック(四ブロック)が把握、推進・援助することになりました。〇三年六月末の提起から、 ブロック評価の方法、評価のポイント、経験交流などで推進し、一月現在で自己評価を六割が終わり、相互評価が五カ所で行われました。


【自己評価の方法】
 自己評価表に、「2点=実行されている、1点=不十分だがとりくまれている、0点=やっていない」で採点。エクセル表で所長、事務長、看護師長が採点 し、三人の平均値が出る。次に総括表を作成し、改善策は「1)早急に改善すべき、2)年度内に改善すべき、3)ブロックや県連の援助が必要」な事項に分け 報告する。
※評価表は全日本民医連のホームページに掲載予定です。

【ブロック評価の目的】
 「東京民医連の診療所ならどこでもこの水準の活動をやっている」という到達点をつくるための、改善課題を具体化する。留意点は、(1)団結し援助する立 場で客観的に、(2)評価者の経験や考え方を入れず点検基準で評価、(3)命令や指示でなく問題の認識と提案、(4)意見交換や経験交流は自由に。


 

診療所で相互評価・自己評価--社会的標準に照らそう」(東京民医連)で紹介し た「東京民医連の評価表」(Zip307KB

・自己評価・改善運動の具体化(1)(Word332k)
・(表3)診療所・ブロック評価マニュアル(Word34k)
・安全安心医療をめざす方針の具体化(3)(Word62k)
・診療所評価表(表1、表2) (Xls553k)
・ブロック評価報告書様式(表4) (Xls18k)
・診療所自己評価表のみ(Xls103k)
・診療所総括表(EXCEL版)(Xls22k)

(民医連新聞 第1326号 2004年2月16日)

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