いつでも元気

2023年7月31日

まちのチカラ 高知県大月町 心洗われる絶景と体験のまち

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

海洋生物が豊富でダイビングスポットとしても人気の柏島

海洋生物が豊富でダイビングスポットとしても人気の柏島

 高知県の西端に位置する大月町。
 透き通るようなエメラルドグリーンの海と色とりどりのサンゴ礁に出会える柏島。
 “東京から最も遠い”と言われるからこそ出会える手付かずの自然や独特の食文化が魅力です。

 高知龍馬空港(南国市)から車で約3時間、四国の西南端に位置する大月町に到着しました。公共交通機関を用いた場合、所要時間的に“東京から最も遠い”と言われる地域で、海岸部を中心に足摺宇和海国立公園に指定されており、ありのままの自然が残っています。
 NHK朝の連続テレビ小説「らんまん」の主人公、牧野富太郎が初の本格的な植物採集調査をしたのも、この町を含む幡多地域です。四国の沖合を流れる黒潮によって育まれた緑濃い森と、エメラルドグリーンの海が広がります。
 まずは、町を訪れる観光客のほとんどが目指すという美しい柏島へ。宿毛湾の南に突き出た大月半島の先端から2本の橋でつながる周囲約4㎞の小さな島で、約400人の住民が暮らしています。
 島の魅力は「船が宙に浮いて見える」ほど透明度の高い海です。インターネットで話題となり、遠方からも観光客が訪れる注目スポットです。
 その透明度を確かめようと、船底がガラスになっている水中観察用のグラスボートに乗り込みました。出航するとすぐに、柏島に住みついているイルカの親子がお出迎え。観察用のガラス越しに映る海は真っ青で、海底までスコーンと透き通って見え、いつまで覗いていても飽きません。
 「あ、フグだ!」「しましまの魚がおった!」と、同乗した3世代の家族も声をあげて楽しんでいました。条件がよければ20m先まで見えるという柏島の海の透明度に、すっかり心を奪われてしまいました。

感動ダイビング

 柏島の魅力といえばもう一つ、海中に暮らす海洋生物の豊富さです。日本の沿岸部には約3500種の魚が確認されていますが、その約3分の1をここで見ることができます。
 世界でも有数のダイビングスポットで、初心者からライセンスがある人までダイビングを満喫できると聞き、スキューバダイビングショップマリンドリーム柏島を訪ねました。
 朝7時、ダイビング講習をしてくれたのはオーナーでベテランガイドの福留貴浩さん。まずは入り江の中で呼吸と耳抜きの練習をし、貴重なテーブルサンゴが広がる後ろ浜へ。
 9・5mほど潜ると、青光りするソラスズメダイやオレンジ色が派手なキンギョハナダイなどカラフルな魚たちの暮らす別世界です。この日はラッキーなことに、アオウミガメが一緒に泳いでくれました。
 ナイトダイビングでは、クマノミの産卵シーンを見ることもできるそうです。「水族館より珍しいものが見れますよ。海から上がった時のお客さんの笑顔が最高です」と語る福留さんは、人情味あふれる瞳で体験者に寄り添います。普段は見られない海の生き物の世界を、あなたも冒険してみてはいかがでしょうか。

漁師の味
鰤のへら寿司

 柏島から戻り、町南部の古満目地区には古くからの郷土料理でブリを腹開きにした鰤のへら寿司が伝わります。古満目は大堂海岸に定置網を敷いており、江戸時代後期から続くブリの産地。特に1960年代前半までは豊漁で、「泣きよったら、ブリ食わすぞ」と言うと子どもが泣き止むという逸話が残されているほど。毎日のように、新鮮なブリを刺身や塩焼きなどいろいろな調理方法で食べていました。
 そんな中、いつもの食べ方に飽きた漁師の料理として生まれたのが「へら寿司」です。名前の由来は、エビの建網の目合いの幅を測る竹のへらや、引網漁の擬似餌へらに形が似ていることだと言われています。2021年には文化庁事業の「100年フード」(地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化)として認定されました。
 今でもお祝いやお祭り事には欠かせない地域食として地元で愛されていると聞き、仕出し屋のみやざきを訪ねました。
三代目の宮崎照也さんが、一番脂がのった部位を胡麻と酢みかんで混ぜ合わせ、風味豊かに締めて仕上げてくれました。噛むとシャキシャキするほど分厚い身は贅沢に脂がのっていて、口の中でじわ?っとうま味が広がります。酢飯との相性も抜群で、上品な一品です。
 高知県の食文化「おきゃく」は、たくさんの人を集めて大皿にいろいろな料理をのせた「皿鉢」でもてなすと言います。「皿鉢料理はへら寿司をたくさん作るので、残ったら翌日に焼いて焼き鯖みたいにして食べるのもおいしいですよ」と宮崎さん。おいしさとともに地域愛を噛み締めました。

風を感じて
四輪バギー

 最後に訪れたのは、東京都からJターンしたという浜岡満さんが代表を務めるラグーンレーシングです。「心の底から遊んでほしい」と熱く語る浜岡さんは、2015年に地域おこし協力隊として移住。バギーのツアーと観光ガイドを始めました。バギーで巡る町の魅力とはどんなものかと、町中心部から南下する樫西海岸コースを体験しました。
 乗車する四輪バギーは50ccで、普通免許があれば誰でも軽快に操ることができます。まずは練習コースで丁寧なレクチャーを受けます。その後、ドキドキしながら絶景が待つコースへ。
 町の見どころを知り尽くした浜岡さんが、町全体を「レースコース」に見立て、操縦が楽しい林道、風光明媚な海岸線、地元のおじいちゃんが手を振ってくれる田舎道など各地をバギーで訪ねます。心地よい風を受けながら360度の開放感で、まさに大月町を「体感」できます。
 他にも、イカ釣りやシュノーケリング、奇岩や大堂海岸の断崖絶壁を海上から見るダイナミックなクルーズなど、様々な体験ができる大月町。日常を忘れて飛び込んだら、透き通るエメラルドグリーンの海が心の洗濯をしてくれるでしょう。

■次回は岐阜県御嵩町です。

まちのデータ

人口
4533人(6月1日現在)
おすすめの特産品
マグロ、力豚、ひがしやま(紅ハヤトの干し芋)
アクセス
高知龍馬空港から大月町役場まで車で約3時間
問い合わせ先
大月町観光協会
0880-62-8133

いつでも元気 2023.8 No.381

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