民医連新聞

2023年10月17日

戦争よりもいのち 日本の政治をひっくり返す秋に 人権としての社保運動交流集会

 全日本民医連は9月21~22日、人権としての社保運動交流集会を東京都内で開き、41県連108人が参加しました。(多田重正記者)

 開会あいさつは、全日本民医連の岸本啓介事務局長。軍拡とともに、社会保障費を抑制する今の日本の政治を「この秋、ひっくり返そう」とのべました。続いて東京新聞記者の望月衣塑子(いそこ)さんが講演し、軍拡を推進する日本の政治の危険や問題点を告発しました。
 問題提起は、全日本民医連社保運動・政策部部長の柳沢深志さん(副会長)。医師増員も、経営問題も、たたかいを抜きには克服できないと強調した第3回評議員会方針に言及し、共同組織の前進や強化と一体に軍拡阻止、社保運動にとりくむ重要性を話しました。
 柳沢さんは、格差と貧困や、コロナ禍の国民生活や医療・介護事業所の困難などをとりあげ、記者会見、対自治体交渉など「全国で現場の実情を明らかにするとりくみがひろがった」と報告。また共同組織とともにまちづくり、市民運動に参画すること、地方政治への働きかけ、社保運動をすすめる職員育成、社保委員会の充実・強化などを呼びかけました。
 その後、指定報告。六つのとりくみの報告を行いました。
 翌日はテーマ別セッション。「大軍拡阻止、憲法守る運動」「受療権を守るとりくみ」「社保運動と職員育成」「共同組織とともに地域の困難に寄り添う実践」の四つのテーマで活動報告を受け、交流しました。

記念講演
「軍拡に突きすすみ、戦争する国へ 私たちはどう抗うのか」
望月衣塑子さん(東京新聞記者)

 望月さんは、5年間で43兆円という大軍拡予算の問題を指摘。国有資産の売却益や特別会計剰余金などもあてますが1回限りで、2027年度以降の財源は、政府も「確実に手当できるものは、まだない」(鈴木俊一財務大臣)と。軍事費に国債を充当する動きも拡大。日本が戦争に突き進んだ反省からできた戦後財政の原則「『借金で防衛費をまかなわない』という不文律が破られる」とした「朝日」社説(2月22日)を紹介しました。
 一方、日本が400発購入を決めたトマホークは、アメリカの許可がなければ使えません。年間2951億円の維持費がかかる上「中国の脅威に対応できない」とアメリカが退役を決めた無人偵察機も、日本は本格導入をあきらめていない矛盾を指摘しました。
 望月さんは、核戦争を想定したシェルターをつくるなど、総額4兆円をかけた自衛隊施設強靱化のため、防衛装備庁がゼネコン幹部と意見交換会をひらいた(「赤旗」日曜版2月26日)ことも紹介。かたや東京芸術大学は、運営費用の不足からグランドピアノ2台を売却(今年2月)。「予算を注ぐべきはどこか」と望月さん。
 メディアの責任も重大です。朝日新聞の船橋洋一元主筆や読売新聞の山口寿一社長などが、政府の「有識者会議」に入って軍拡を議論。山口氏が同会議で「外国製のミサイル購入」を主張した後に、読売新聞がアメリカからのトマホーク購入を大々的に報道。まさに自作自演です。
 望月さんは日本と中国をたたかわせ、自らはたたかわないアメリカの戦略(オフショアコントロール)に日本が組み込まれていることも紹介。日本の軍拡は、日本ではなく「アメリカのため」と断言しました。

指定報告から
憲法を守り・生かす運動を気軽に楽しく
山梨・共立介護福祉センター いけだ 小松雅代さん(事務)

 小松さんは、山梨民医連の「憲法フェス」について報告。「憲法フェス2022in山梨」ではポスターコンクールを行い、今年5月の県連総会で選考結果を発表。最優秀作品は、やまなし勤労者福祉会・いけだ反核社保委員会の作品で、「日常のなかで平和と感じる瞬間」をスマホで撮影しポスターに。憲法フェス2023のポスターにも採用し、県連の全事業所に掲示しています。
 甲府共立病院は憲法川柳を実施し、「憲法は平和と暮らしの道しるべ」が最優秀賞。他にも「自転車を持っていないが、体を動かしたい」との声に応えた「ピーチャリ&ピースウオーク」や、1年目研修で「kenpo game」を行い、「私たちの生活のなかにある憲法」を考えたとりくみなどを報告しました。

健康保険証の存続を求めて
石川民医連 藤牧圭介さん(事務)

 石川民医連は、マイナ保険証に関し、オンライン資格認証機器を導入した14事業所にアンケートを行ったところ、71・4%(10事業所)が、トラブルを経験。結果を発表した記者会見には、地元テレビ局3社、新聞6社が参加し、報道されました。
 トラブル内容は、保険情報が正しく反映されておらず、「無効・該当資格なしと表示」9件、「カードリーダーやパソコンの不具合で読み取れなかった」5件、「マイナ保険証の不具合」2件。そのほとんどが「現行の保険証を持っていれば対応できた」と藤牧さん。「ひきつづき、あきらめないことを大切に現場から声をあげたい」とのべました。

生活保護利用者の自動車保有問題
和歌山生協病院 長谷英史さん(SW)

 長谷さんは、左足ひざ下を切断し、義足で生活するAさん(50代男性)の事例を報告しました。
 Aさんは病気で働けなくなり、和歌山生協病院に入院しました。生活保護の申請が認められましたが、持っていた車は「処分保留」に。これは「処分を猶予されている」状態で、原則1年以内に処分を迫られるというもの。乗車は許されず、市から「車に乗るな」と執(しつ)拗(よう)な責めが続き、精神疾患も発症。「Aさんは100メートルも歩けば、義足と接する部分の皮膚が腫れ上がってしまう」と長谷さん。「年間の通院移送費(タクシー代)の方が高いのに、車の保有・運転を認めないのはおかしい」と憤りました。
 長谷さんは「Aさんが車を使いながら生活できるように保障することが行政の責務」だと訴えました。

新人看護師とともにナース・アクション
福岡医療団 河本真理さん(看護師)

 ナース・アクションの始まりは、2022年2月開始の看護職員等処遇改善事業。看護師の35%しか補助金の対象にならず、看護師に分断をもたらすとの危機感から県連で運動課題に。県内の病院看護部長、訪問看護所長あわせて1230事業所にアンケートと署名の協力も依頼。同年7月、県連内3法人の看護部長と労働組合も加わり、ナース・アクションと銘打って実行委員会を結成しました。
 今年5月、「民医連外の人たちもサポーターに」とナース・アクション福岡結成総会を開き、学習会と博多駅前の宣伝行動を実施。宣伝行動はマスコミも注目しました。河本さんは新入職員による入職5カ月後のふり返りで「ナース・アクションなどの活動を通して、看護師の処遇改善や働き方について考え、よりよい医療を提供するために運動を行っていることが理解できた」などの声が出されたことを紹介しました。

豊山町のPFAS汚染と住民支援
愛知民医連 武田修三さん(事務)

 武田さんは、今年1月に豊山町の住民団体からの相談を受けて開始した、PFAS汚染に関する愛知民医連のとりくみを報告。豊山町では2021年に、水道水のPFAS汚染が発覚しました。
 今年6月には、豊山町民の生活と健康を守る会とPFAS汚染究明血液検査実施委員会の主催で、血液検査を実施。54人の検査結果を7月に記者会見で発表、4種のPFASの合計で25人が、アメリカで特別の注意を要するとされる20ng/mlを超えていました。
 9月12日、北病院、千秋病院でPFAS相談外来を開始。武田さんは、住民に寄り添いながらとりくんでいく決意を話しました。

中野・杉並区における市民の政治参加
東京・健友会 菅井一郎さん(事務)

 菅井さんは、中野区と杉並区における健友会の市民運動への参加について報告しました。
 2018年の区長選挙前には市民運動が結集し「区民の声を聴く中野区政を実現させる会」となり、健友会もオブザーバー参加し、新しいつながりに医療・介護問題などを伝えてきました。
 健友会では、多職種と友の会も参加する地域包括ケア推進委員会が2015年からスタート。冊子も作成し、中野区長の酒井直人さんに渡すなどし、同区長は2022年の再選時に「地域包括ケアの確立」を公約に掲げました。
 杉並区でも、市民が奮闘し岸本聡子区長が誕生。菅井さんは市民と野党の共闘、「あきらめない」ことの重要性を強調しました。

(民医連新聞 第1793号 2023年10月16日)

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