民医連新聞

2024年3月19日

被災地でつながりを 地域に寄り添い課題共有 石川・羽咋地域訪問行動

 2月6日、石川民医連の羽咋(はくい)診療所と石川県健康友の会連合会の能登中部ブロックは、診療所周辺の御坊山(ごぼうやま)地域で訪問行動を行いました。訪問で見えた地域の現状や課題、共同組織や民医連に求められることとは。(稲原真一記者)

 羽咋市は人口約2万人、高齢化率は40%(2020年)の地域で、友の会会員は約5500人います。この日の訪問は被災地域の実態調査と、同月9日に開催予定の地域サロンへの案内が目的です。全国からの支援者1人を含む7人が、3チームで訪問を行いました。
 前日に降った雪を踏みしめながら戸を叩き、「羽咋診療所から来ました。体調や生活はいかがですか?」と、声をかけるのは羽咋診療所所長の野口卓夫さん(医師)です。御坊山町は、元々あった河川を埋め立ててつくられた土地。市内でも液状化の被害が大きかった地域で、よく見れば雪間に見える路面はひび割れ、住居も土台が崩れたり梁(はり)が歪んだりしています。訪問に参加した友の会の山上順子(やまじょうとしこ)さんは、「被害は聞いていたが、実際に歩いて深刻さを実感した」と顔を曇らせます。

補償なく取り残される

 立ち入り危険の赤い紙が張られたある家では、「要介護4の夫が避難している」という人がいました。入院は決まったものの自宅には戻れず、認知症の夫は地震後に家を怖がるように。「支援金は出て数万円。二人で最期までこの家でと思っていたが、それもかないそうにない…」ともらします。
 他にも「屋内は床がボコボコだが、市の職員は外だけ見て被害なしとした」と憤る人も。別チームでは、道路の損傷やバスの減便で通勤や通学に支障がある人や、避難先に家財道具がなく洗濯を手洗いでしている人もいました。
 「私は大丈夫。輪島や珠洲に比べれば…」と言う人も多く、診療所職員の稲元郁代さん(事務)は「被害は広範なのに報道では取り上げられず、取り残されていると感じる人もいる」と。「できるだけ多くの人に声をかけられるよう訪問行動を継続したい」と、全国支援にも期待します。

つながりささえ合う

 能登中部ブロックは1月20日にも会員訪問を実施し、161軒で対話。事務局の能岡(よしおか)好道さんは、「訪問中に涙を流す人もいて、心のケアが必要と感じた」と言い、地域サロンを企画しました。
 羽咋診療所と友の会は地域の諸団体とともに「頑張ろう! 羽咋地震対策連絡会」を結成。2月5日の初会合では、「液状化での家屋被害は、国の補償制度の対象外。高齢者などへの追加支援も自治体で区切られ、羽咋市は受けられない」という実態がわかりました。連絡会は同月20日、自治体独自の支援策を求める要望書を、羽咋市に提出しました。

全国でも備えを

 野口さんは「今後求められるのは介護などの生活支援。いま避難所に残っているのは震災前から問題を抱え、帰る場所のない人」と指摘します。能登半島では2007年にも震度6強の地震がありましたが、石川県はその後も防災計画を見直していません。地域ごとの避難所環境に大きな差があるのを見て、自治体や国の政策に関心を向ける大切さを感じています。
 一方で、事業所の備えも不十分だったといいます。職員のメンタルヘルスでは、「全国からの心理職の支援が本当に助かった」と野口さん。「実効性のあるBCP(事業継続計画)づくりと、日常的に職員が余裕を持って働ける職場環境の重要性を実感した」とふり返ります。
 羽咋市は、志賀原発のある志賀町と隣接しています。稲元さんは「今回、ひとたび原発事故が起これば逃げ場などなく、日頃の備えは何の意味もなくなるとはっきりわかった。原発推進など論外」と言います。野口さんは「今回のことを教訓に全国でも災害対策を議論し、自治体や国の政策、方針で間違ったことには声をあげてほしい」と呼びかけます。

(民医連新聞 第1802号 2024年3月18日号)

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