民医連新聞

2024年4月2日

こんなにヤバイ!! 日本の食料事情 (6)国が「食の安全」を放棄

 政府は食料・農業問題の憲法といわれる「食料・農業・農村基本法」の改定案を2月27日に閣議決定し、国会に提出し審議中です。その特徴は、食料自給率向上を放棄し、本格的に農業・食料を、アグリビジネスなど企業のもうけの道具にする方向に踏み出すものです。国民への食料供給をさらに不安定にし、日本を「飢餓の国」に導くものと言えます。
 その中身は、(1)「自給率目標」を現行の「食料の安定供給の確保」から「食料安全保障のための目標」に変質させ、(2)「自給率向上」という文言は名目的に残したものの、政府の義務ではなく、「農業者その他の関係者がとりくむべき課題」にすりかえ、(3)自給率向上のために政府がとるべき施策を国会に提出することを求めていた条文を廃止し、インターネットなどでの公表にとどめる、というものです。これは、就農者や農地の減少、輸入農産物の増加など、食料自給率を低下させてきた今までの農政の検証を欠いたまま、「食料自給率の目標」を「その他」の指標に混ぜ込み、事実上、その向上を放棄しています。
 さらに重大なのは、岸田政権がすすめる「戦争をする国づくり」と軌を一にした「食料供給困難事態対策法」を、基本法改定案と抱き合わせで提出していることです。本連載第3回で、政府が「花よりも米、イモをつくれ」という法案を検討していることを書きました。今回の法案はまさにそれで、カロリー重視の生産転換(イモ、米)を生産者に要請・指示し、指示に従わなかった場合は20万円以下の罰金を科す内容です。戦前の流通統制、配給制度さながら「いざというときは農家にイモを強制的につくらせ、国民はイモを食べて飢餓に耐える」という「戦時食料法」そのものです。
 改定案から青年の「新規就農支援」が欠落していることも大問題です。ロボットやドローン、AI(人工知能)を使って「生産性」を上げるものであり、農家のいないロボット農業をめざすといいます。
 農民連がとりくんでいる「食料自給率向上を政府の義務とすることを求める」署名を大きくひろげ、食と農の再生、食の安全に役立つ基本法改定を実現しましょう。(署名はQRコードから)


かつまた まさし
農民運動全国連合会の常任委員。新聞「農民」の編集長も務める。

(民医連新聞 第1803号 2024年4月1日号)

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