民医連新聞

2024年4月16日

相談室日誌 連載558 外出したい思いに寄り添う 最期に希望かなえる支援(長崎)

 Aさんは70代の男性(独居・生活保護利用中)。他院で大腸がんの管理をしていましたが、化学療法に反応なく緩和ケアの方針となり、近医の当院に転医を希望して、外来通院していた患者です。
 胸椎圧迫骨折と肺炎診断で当院へ入院、回復期リハビリテーション病棟で加療を行い自宅への退院に向けた調整を行っていました。しかし、背部痛の増強があり、検査の結果、腰椎圧迫の骨折診断とがん骨転移の可能性が指摘され、退院は延期しペインコントロールを行いました。病状を考慮し医師からは、「退院後は訪問診療管理が望ましい」と説明しましたが本人は拒否。その後、痛みが軽減した段階で、本人が「今のうちに家に帰りたい」と希望しました。テスト外出評価で通院可能と判断し、退院に向けて介護サービスなどの調整を行い、なんとか無事に退院できました。
 入院中、本人は通院以外でも、「買い物やレンタルビデオ店にも行きたい」と希望しましたが、背部痛の持続もあり、医師から「再骨折のリスクが高く、一人での外出は厳しい」と説明していました。
 退院後、Aさんの思いは変わらず、在宅担当者で検討し、外出機会を確保する支援として訪問リハビリを導入し、レンタルビデオ店などへの外出評価を行っていました。
 その後Aさんは、呼吸困難やがん性疼痛(とうつう)で当院に入退院をくり返しながら自宅での生活を継続し、最期は病院での看取りを希望しました。最期の入院の際には、遠方に住むめいや義兄が、本人の希望通りに身辺整理を行いました。Aさんは「気になっていたことができてほっとした」と安心し、その一週間後、永眠しました。
 退院支援の際、病状や安全面を考慮し自宅復帰を不安視する病院側と、この状態でも在宅で支援してきたという在宅担当者との間にギャップを感じることがあります。
 入院時に在宅スタッフから病棟スタッフへ、患者がどのように在宅生活を送っていたのか情報提供・共有すること、患者の希望をかなえるために、本人・家族、多職種で連携していっしょに考えていくことが大切だと思いました。

(民医連新聞 第1804号 2024年4月15日号)

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