民医連新聞

2024年6月4日

こんなにヤバイ!! 日本の食料事情 (8)国の無策で激減する農家

 農民連の長谷川敏郎会長は、5月14日の参議院農水委員会参考人質疑で、次のように意見陳述しました。「農村現場では、つくり手が減り、耕作放棄で荒れる水田がひろがっています。コロナ禍以後の生産者米価の暴落、資材高騰で、『あそこも、ここも』と米づくりをやめています。私の地元、島根県邑南(おおなん)町役場で調べてもらうと、米を作付けする農家はたった4年で16%も減りました。こんな農村でいいのでしょうか。また、こんな農村になぜなったのでしょうか」。
 米も野菜・果樹も畜産・酪農も後継者がおらず、経営は赤字。まさに日本から農業の灯が消えるかどうかの瀬戸際です。基幹的農業従事者は2000年の240万人から23年には116万人に激減し、四半世紀で約半分に。農地も2000年の483万ヘクタールから、20年には437万ヘクタールに減りました(図)
 問題は担い手不足に対する新規就農者対策で、政府がまったくの無策だったことです。国会で審議中の「食料・農業・農村基本法改定案」にも、新規就農者対策はまったくありません。
 政府でさえも「今後20年間で、農業の担い手は現在の約4分の1(120万人→30万人)に減少し、農業の持続的な発展や食料の安定供給を確保できない」(23年12月27日)と指摘しながら、基本法改定案が示す対策は、「先端的な技術等を活用した生産性の向上」。つまり、(1)農民の代わりにロボットやドローン、AI(人工知能)を使う「ロボット農業」でしのぐ、(2)国民にはコオロギなど昆虫や遺伝子組み換え・ゲノム編集食品、人工肉などを食べてもらう――の2つで、両方とも企業のもうけのための農業と言うべきものです。
 一方で、新規就農者育成対策予算は121億円にすぎません。農民のいないロボット主体の農業をめざす農政か、後継者を育てて家族経営が活躍できる農政かが問われています。
 坂本哲志農水大臣は、今国会で「生産基盤は弱体化していない」と強弁しましたが、野党の強い批判で謝罪と撤回に追い込まれました。そんな危機感のない認識で、自民党、公明党、日本維新の会などは農業基本法改定を強行し、立憲民主党、共産党、国民民主党などは反対しました。食と農の再生を求めるたたかいはこれからです。


かつまた まさし
農民運動全国連合会の常任委員。新聞「農民」の編集長も務める。

(民医連新聞 第1807号 2024年6月3日号)

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