いつでも元気

2008年4月1日

後期高齢者 エッ、健診を受けられない!? 高血圧・糖尿病・高脂血症の薬を飲んでいたら

 後期高齢者医療制度の発足にともない、四月から従来の自治体健診が「特定健康診査」(特定健診)に変わります。七五歳以上の後期高齢者の健診はどうなるのでしょうか。

「健診必要なし」が本音

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原 和人
全日本民医連前副会長

 七五歳以上の健診について、厚労省の本音は、「必要なし」「カネをかけるな」です。しかし各地の運動に押されてしぶしぶ「努力義務」として認め、四七都道府県すべてで特定健診が実施されることになりました。〇八年度は、国が三分の一の補助金を出すことも決まりました。
 一方で厚労省は、こんな指示を都道府県に出しています。
七五歳以上は、健診申し込み時に、糖尿病や高血圧の薬、コレステロールを下げる薬を飲んでいるか質問し、一つでも服用している場合は、健診を受けさせるな(受けなくていい)という指示です。
 「すでに治療中の人は、必要な検査は病院・診療所で受けているはず」というのですが、病院・診療所では、かかっている病気についての検査はできますが、ほかに病気がないかをしらべる検査はできません。

外来診療にも新たな制限

 その上、外来診療にも新たな制限を加えようとしています。
 四月から、後期高齢者の外来診療で、「後期高齢者診療料」が新設されます。これは、高血圧や糖尿病などの慢性疾患がある高齢者を継続的、計画的に診察す る主治医(主として診療所)に対する報酬で、いくら検査や処置をしても医療費は定額(月六〇〇〇円)というものです。
 この額では現行の半分程度の治療しかできない(「老人の専門医療を考える会」のシンポジウム)といわれ、医療側も検査を控えることになりかねません。
 通院しているから健診は受けなくてよいとする一方で、外来では十分な検査をしにくくする。「高齢者の健康の保持」よりも「高齢者の医療費の抑制」が大事という国の姿勢は明らかです。

医療費削減が第一の目的

 「特定健診」は、これまでの「基本健康診査」とどう違うのでしょうか。
 これまでの基本健診は、「国民の老後における健康の保持」を明記した老人保健法にもとづき、四〇歳以上を対象に国の責任で自治体が実施してきました。「早期発見、早期治療」で住民の健康を守ろうと、自治体ごとに検査項目を充実させ、総合的な健診にしてきたのです。
 特定健診は、メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)に特定した健診(表)をし、健診結果にもとづいて指導(特定保健指導)することで、糖尿病や 高脂血症、高血圧などの生活習慣病を減らそうというものです。目的は、死亡全体の三分の一を占めるこれらの生活習慣病を早期に発見して重症化を予防し、医 療費を削減すること。
 国は、二〇一五年までに生活習慣病患者・予備軍を二五%減らすことにより、医療費を二兆円削減するとしています。

健康の自己責任化すすめる

 ほんとうに国民が健康になり医療費が少なくなるのなら結構なことですが、高齢化が進む八年間で、患者・予備軍を二五%も減らせるものでしょうか。国がす すめる「健やか生活習慣国民運動」(仮称)のスローガンは「一に運動、二に食事、三に禁煙、最後に薬」です。病気を自己責任にし、予防も自助努力にし「医 者にかかるな」というようなものです。
 健診の主体も、国や自治体から国保連合会や広域連合(注)など、保険者に変えました。保険者は、健康保険事業を運営するために保険料を徴収し保険給付をおこなうところ。給付(健診)の充実が、すぐ保険料にはね返ることになります。
 また各保険者に健診受診率や保健指導の効果があがったかなどを競わせ、成績が悪ければ高齢者医療への支援金(現役世代からの拠出)の負担を増やすというペナルティー(罰則)も準備しています。

運動でまだまだ変わる

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イラスト・高村忠範

 後期高齢者の特定健診は、まだまだ問題山積です。健診を広域連合がおこなうのか各自治体に委託するのか、また、費用についても無料なのか一部負担があるのかなど都道府県によって異なります。
 東京都は、当初、保険料が予想以上に高くなったために、五〇〇円の一部負担を徴収することにしていました。しかし、その後の運動により、当面二年間は自己負担分を無料にすることを決めました。
 宮城県や新潟県では、運動によって、希望者全員に健診を実施することになりました。健診項目も、従来の自治体健診の内容で実施させることも可能です。
 後期高齢者の医療制度も特定健診も、「年寄りは早く死ね」といわんばかり。どこでも知れば知るほど怒りが巻き起こっています。広域連合と自治体に対して 健診の充実を求めていくと同時に、国に対し、あくまで後期高齢者医療制度の中止・撤回を求める運動を、大きくすすめていきましょう。

【注】広域連合:後期高齢者医療制度を実施運営するための都道府県単位の組織

健診 どう変わる?

 

これまでの健診(老人保健法)

特定健診・特定保健指導では

目的

さまざまな病気の早期発見
→早期治療に結びつける

メタボリック症候群と糖尿病を減らす
→健診結果で3レベルに分け保健指導
((1)情報提供(2)動機づけ支援(3)積極
的支援)により医療費を削減する

対象
年齢

40歳以上

40~64歳(健診・保健指導をすすめる)
65~74歳(動機づけ支援のみ)
75歳以上(健診もやらなくてもよい)

健診
項目

問診                 ○
計測(身長・体重・肥満度)    ○
診察                 ○
血圧                 ○
血液検査:中性脂肪        ○
 :善・悪コレステロール      ○
 :肝機能(AST/ALT/γ-GT) ○
 :空腹時血糖           ○
 :ヘモグロビンA1c        ○
 :血色素測定・赤血球数・
           ヘマトクリット ○
尿・腎機能:尿たんぱくと尿糖  ○
 :潜血・血清クレアチニン    ○
心機能:心電図           ○
肺:胸レントゲン          ○
 :喀痰(かくたん)細胞診    ○
眼底検査       医師の判断で


○+腹囲(75歳以上は除く)






医師の判断で実施

×
医師の判断で
×
健康増進法でおこなう
医師の判断で

*健診項目は大阪自治労連学習資料を参考にしました

いつでも元気 2008.4 No.198

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