いつでも元気

2009年9月1日

後期高齢者医療制度 保険料滞納のペナルティ 悩まず相談を

いちばんの“救済策”はこの制度の廃止です

 後期高齢者保険料の支払いができずにいた人に、催告書が送られていました。 「未納のままだと、医療費一〇割負担になる資格書の交付もある」という内容。また、読者からもハガキが(写真)。“滞納者の相談に乗り、資格証明書の発行 はしゃくし定規にしないように”と、厚労省も求めているはずなのに…心配です。
「こんな人から保険証をとりあげてはいけない」とされている項目を紹介します。制度 廃止を求める声を引き続きあげながら「困っている人はいませんか?」 の、声かけも大切です。

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「保険証とりあげ」と催告書

 神戸市に住むAさん(女性)のもとに催告書が届いたのは五月なかばを過ぎたころ。四カ月分、二万円近い保険料をすみやかに支払うよう求めるものでした。
 未納だと「財産差し押さえ」「保険証のとりあげ」「高額療養費の支払いの全部または一部の差し止め」もあると罰則をあげ、文末に「延滞金を加算」とま で。さらに同封のピンク色の用紙に「滞納が解消されない場合、短期証を発行」と。地域社保協関係者への相談に至りました。
 月額五万円の年金に対し、後期の保険料は四三〇〇円余、介護保険料の約五六〇〇円をあわせ、年六〇万円の年金に、一〇万円の保険料でした。夫の年金が二五〇万円で課税されるため、同じ世帯のAさんの保険料も、こうなりました。
 保険料滞納のきっかけは、息子さんの病気でした。入院、人工透析で多額の医療費が必要になり、年金を担保にして公的融資を受けたため、保険料は年金天引 きではなく「普通徴収」になっていたのです。介護保険料はなんとか払いましたが、医療保険料は払いきれませんでした。
 「神戸市は同じ通知を約四六〇〇人に発送したと発表しています。滞納者には請求→督促→催告の手順で通知がいきますが、その間Aさんには訪問も電話もな く、事情もきかれませんでした。事情をきけば悪質滞納者ではないとわかったのに。もともと『普通徴収』の方は圧倒的に低年金、無年金で、保険料負担が厳し い層なんです」と、兵庫県民医連の大杖哲司事務局次長。
 同県の広域連合の滞納者への対応方針は、今年は資格書発行はせず、半年間の短期証を出す、というものです。神戸市には社保協として懇談し、対応の是正を求めています。

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『元気』読者のBさんも

 読者のBさん(高知)から編集部に届いたハガキにも「保険料が払えず役場に資格書を出すといわれ…」。
 後期高齢者医療制度がはじまり、六〇〇〇円だったBさんの保険料は一気に三万四〇〇〇円に。国民年金未加入なので、天引きではなく普通徴収です。
 「家はあるが団体年金だけの八六歳に、こんなに高い保険料は払えません。なぜこの額なのか、説明を求めても、まともな回答はありません。定額給付金の二万円を納めただけで、一年払ってきませんでした。資格書は困る、このけしからん制度は廃止しなければ」とBさん。

 全国の滞納者がどれだけにのぼるのか、正確な数はわかっていませんが、全国保団連の調査では、一七万人超(09年1月)、朝日新聞では二〇万人とも報じています。Bさんがいうように、救済の近道はこの制度の廃止です。

木下直子記者

“助けて”の投書、医療費減免の相談にのる

福岡民医連

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(西日本新聞)

 「現役並」とされた収入の高齢者にも、窓口負担3割が払えないケースが出ています。後期高齢者医療保険にも、国保のような減免制度や、広域連合で独自に救済策があります。
 福岡民医連は地元紙に載った投稿(左)の書き手を訪ね、減免手続きの相談に乗っています。
◆職員がこの投稿をみつけ、福岡民医連に知らせてきました。新聞社を介して「相談に乗りたい」と伝え、地元のくるめ医療生協職員とともに、投稿したCさんに会いに行きました。
 事情を聞くと、たいへんさは文面以上でした。額面上の所得は高額の部類でしたが、長年操業していた工場が不況で倒産、財産を売り払って数十人の従業員の 退職金や就職の支度金を捻出していました。年金収入は唯一保護したものの、失業した息子一家の生活費や借金返済にも回していました。
 3割の自己負担はとても無理だと夫婦そろって治療を中断。投稿時に「入院中」と書いていた妻は、その費用が払えないため退院していました。
 後日、くるめ医療生協職員が市役所に同行し、自己負担減免を申請する旨を伝えましたが、Cさんの所得では市民税非課税にも、生活保護基準以下にもならな いため減免に該当しないとのこと。倒産後収入が激減していたCさんは確定申告の更正をおこなっていたため、更正通知を確認すると標準課税額以下になってい る事が判明。自己負担率が1割に下がり、Cさん夫妻は治療を再開できました。
 新聞社にこんな反応をしたのは民医連だけだったそうですが、このことをきっかけに、投稿にも注意を払うことにしています。

 

いつでも元気 2009.9 No.215

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