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2015年10月20日

どないなってんの?!大阪 くらし削った 橋下 維新の政治

 大阪では一一月に府知事と大阪市長のダブル選挙が行われます。橋下徹大阪市長を先頭にした与党(現・おおさか維新の会)の八年間は住民向け施策を大幅に切り捨てるものでした(別項)。「こんなやり方が全国に広がっては申し訳ない」と地元から声が出るほど。大阪民医連でも「維新政治を終わらせよう」と呼びかけ。私たちに関わりの深い国民健康保険や生活保護について大阪市で聞きました。(木下直子記者)

□国保…多発する差し押さえ

 大阪市の国民健康保険の加入者は約七六万人で、滞納率は二三・一%(二〇一三年度)です。滞納者へのペナルティーとして、正規保険証を取り上げる制裁が多くの自治体で行われていますが、大阪市ではこれに加え、資産調査と差し押さえの処分が多発しています。
 二〇一四年度、大阪市内の行政区で差し押さえ件数が他区と一桁違いで多かったのが西淀川区(二四二世帯)でした。「橋下市政がやっていることは『容赦しないぞ』という市民への脅しです」と、同区社会保障推進協議会の矢野正之事務局長(写真)が区から入手した差し押さえ一覧を示しました。見れば、差し押さえ金額はわずか五〇〇〇円未満というケースが七〇件も。
 矢野さんたちが区に問うと「必要経費以上の預貯金があれば差し押さえる決まり」という回答。「必要経費」は数千円程度だということも分かりました。「差し押さえ自体は前市政からありましたが、葬式代程度(八〇万円)は猶予し、数千円も逃がさないという対応ではなかった」と矢野さん。「しかも預金や生命保険、不動産のほか、国税徴収法が禁じた給与まで差し押さえています」。

□納付に来た人を追い返す

 この夏、淀川勤労者厚生協会の幹事・宮島正さんに入った相談がそうでした。子ども二人を含む四人家族で、払いきれなかった国保料が三年で一〇八万円になった淀川区の世帯です。差し押さえだけは避けたいと世帯主のAさんが国保課に持っていった一〇万円を窓口担当者は「話にならない」と受け取らず、滞納分の半額を要求。その後、定期預金の一〇五万円を差し押さえたのです。口座は普通預金に連動するため、給与が入っても引き出せなくなりました。Aさんは借金で三〇万円を捻出し再び窓口へ。しかしまた滞納半額の即納を求められ、帰されました。
 三度目は宮島さんが窓口へ同行。給与など生活費の差し押さえは違法だと国税庁の書面を示し解除を求めても「市当局の指針に基づいている」の一点張り。担当者の上司が出てきて「三〇万円納めるなら」と、やっと応じました。
 「滞納は生活が苦しいというSOSでもある。自治体がそれを見ずに、困っている世帯も悪質滞納者同様に処分し、追い詰めて良いわけがありません」と、宮島さん。これらの対応は市に改善を求めていくことにしていますが、「高すぎる国保料を下げない限り、同様の事態が拡大する」と強調しました。
 大阪市の国保料は、夫婦と子ども二人の年収三一二万円(所得二〇〇万円)のモデル世帯で四〇万円を超えます。保険財政は三年間黒字にも関わらず、保険料は二年連続引き上げ。「府内平均の保険料に近づけたい」という橋下市長の意向でした。

□セーフティネットは

 最後のセーフティネットである生活保護分野は、扶養義務の強要や、受給者に介護保険の利用料負担をさせていたことなどが、昨年全国的な問題になりました。
 また、生保受給者が全国の政令市で唯一減少。全大阪生活と健康を守る会の江田有子事務局長は「私たちに入る生活保護申請の相談も減っています。行政区ごとに水際作戦がされ、特に若い層は働けるだろう、と受け付けない。申請の相談に行った日に『週○回ハローワークに行って、仕事を取れ』と、受給者以外に行ってはいけない助言・指導がされたケースもありました。後に市も行きすぎを認めましたが、非公式に続けている行政区もある」と話します。
 生活保護を担当する職員についても、厚労省から毎年人員不足を指摘されており、一三年度の不足数は四八一人。その上、「任期付CW」や「訪問専門の嘱託職員」などの非常勤が全体の四割超を占めています。
 こうした体制でも回っているのは、六〇歳以上の受給者はCW一人で三六〇人を担当させるなど、市で独自基準を設けているからです。六〇歳以上の受給者の訪問専門職員は一人で二八八人を担当(一二年四月時点)。当然、長期間訪問できない人が出るなど、援助は不十分になり、その点も厚労省から指摘されています。
 なお、就労支援は、パソナやアソウグループなどの人材派遣会社に約八・五億円で委託されています。会社は就職件数で成果を問われるため、相談者が望まない仕事を強要したり、「就労しないと保護が切れる」と脅すなど、支援とはほど遠い実態も生んでいます。
 「維新が与党になって、くらしは目に見えて悪くなりました。社会保障をいかに削るか。自治体の仕事をどこまで民間委託して企業に儲けさせるか、大阪がまるで『実験場』のよう。これが全国にも波及しては困る」と江田さん。
 大阪民医連は、この一一月のたたかいを「維新政治を止めるとともに、安倍政権の暴走の歯止めにもしよう」と位置づけ。土井康文同県連事務局長は「反・維新の立場で広く共同したい」と語っています。


橋下氏が行ってきた切り捨ての数々

大阪府知事時代…障害者団体への運営補助金廃止、高齢者用住宅改造助成の廃止、街かどデイハウスの補助金削減、障害者ガイドヘルパー派遣事業補助金廃止、障害者福祉作業所・小規模授産施設補助金廃止、軽費老人ホーム運営助成の給与改善費の段階的廃止、千里救命救急センターの補助金廃止、府立青年センター売却

大阪市長になってから…保育特別対策(1歳向け人件費補助)廃止、保育料軽減措置の見直し、民間社会福祉施設職員給与改善費廃止、学校給食費交付金廃止、新婚世帯補助廃止、障害者・高齢者向け上下水道料金廃止、ひとり暮らし老人への配食補助廃止、老人憩いの家運営助成廃止、敬老パス有料化、国民健康保険料独自減免措置廃止の方向、住吉市民病院解体、生活保護予算の削減、介穫保険料値上げ、黒字の国保料値上げ、大阪音楽団廃止、大阪フィルハーモニー補助金削減、文楽協会補助金削減、プール・スポーツセンターの改悪、市民交流センター・男女共同参画センター・総合生涯学習センター・市民学習センターの統廃合

(民医連新聞 第1606号 2015年10月19日)

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