くすりの話

1997年1月1日

くすりの話 薬と薬の飲み合わせ

Q:以前、「ソリブジンと抗がん剤の併用で死亡者」ということがありましたね。食べ物と薬の飲み合わせについては教えてもらいましたが、薬と薬の飲み合わせについても教えてください。

A:ソリブジンと抗がん剤の併用で死亡者が出たと報道されたのは93年11月のことでした。
これは、皮膚病の薬の抗ウイルス剤ソリブジンは、フルオロウラシル系の抗がん剤の併用によりおこった副作用です。ソリブジンが発売されてわずか1カ月のあ いだに、血液障害などで15人が死亡、8人が重症となりました。その後ソリブジンは回収されています。
食べ物同士でも組み合わせによっては、消化がよくなったりお腹をこわしたりすることがありますが、薬も飲み合わせによって効果が増したり減ったりします。これを薬の相互作用といいます。
相互作用によって、治療効果があがったり、副作用が減ったりもします。しかし予想以上の効果が出ることや、ソリブジンのケースのように副作用が出やすくなることもあるのです。
ソリブジンと抗がん剤の相互作用は次のようにしておこりました。フルオロウラシル系の抗がん剤はおもに肝臓で代謝され(化学変化を受ける)無毒化されて排 泄されます。ソリブジンも同じように代謝されますが、この化学変化でできた物質(プロモビニルウラシル)が抗がん剤の分解を妨げて、抗がん剤の血中濃度を 必要以上に上昇させます。
それは、必要量の10倍の抗がん剤を飲んだ強さと同じくらいです。そのため抗がん剤の副作用(血液障害など)がひきおこされたのです。しかもソリブジンか らプロモビニルウラシルへの分解は、腸内細菌によっておこると報告されています。医薬品の開発段階ではわかりにくく、人に使ってから副作用事例が多発しま した。

Q:なんだかこわいですね。相互作用をさけるにはどうしたらよいのですか?

A:ソリブジンのケースでは、患者ががんを告知されておらず、抗がん剤を飲んでいることを知らなかったこと、皮膚科と内科にまたがるため併用薬の把握が医師に もできていなかったことが考えられます。(しかし、死亡例のうち2例は両方の薬を同じ医師が処方していたケースもありました)
複数の診療科にかかっていると、5種類くらい薬を飲んでいる患者さんは多くいます。この場合26通りの相互作用があるわけですが、全部が問題になるというわけではありません。
相互作用をおこしやすい薬は、ある程度わかってきていますから、自分の飲んでいる薬の名前を覚え、新たに薬が追加されるときはかならず医師に伝え、相互作 用がないか確認してください。多くの薬局では「お薬説明書」を発行していますので、他の医師に受診する際、提示することをおすすめします。
また、「かかりつけ薬局」を決めて、服薬歴から相互作用のチェックをしてもらい、注意すべき点を確認するとよいでしょう。

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