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2019年3月7日

まちのチカラ・愛媛県内子町 
四国山里の誇り 内子ねき歩き

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

創建100年を超える近代和風建築の芝居小屋「内子座」。今も現役

創建100年を超える近代和風建築の芝居小屋「内子座」。今も現役

 松山から愛媛県の中央へ車で約1時間、かつて木蝋の生産で栄えた内子町があります。
 四国で最初に町並み保存地区に選ばれた「八日市・護国地区」には繁栄の残り香が今も。
 歴史情緒あふれる町を歩きました。

八日市・護国で歴史にふれる

 内子町の中心部は観光名所がそろい、「ねき歩き」を案内する地元ガイドが活躍します。「ねき」とは内子の方言で「近場」のこと。「家の近所で道を聞かれることが多いんですよ。旅人との会話が面白くて、退職後に始めました」と話すのは、「内子町町並みガイドの会」の古田俊明さん。お勧めのルートを案内してもらいました。
 まずは「八日市・護国地区」という全長約600mの町並みを歩きます。ここは江戸から明治にかけ木蝋の生産で財を成した商人の町。ゆるやかな坂道沿いには商家や町家など約120棟が並び、1982年に四国で初めて重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。懸魚、鏝絵、出格子、鳥衾など多彩な意匠を発見しながら歩くのも、内子ねき歩きの醍醐味です。
 かつての豪商の屋敷「木蝋資料館 上芳我邸」や商家の建物「商いと暮らし博物館」に立ち寄り、当時の暮らしに想いを馳せるのもいいかもしれません。木蝋資料館では苦労の末に築いた木蝋生産の工程も見られます。夕日に照らされた淡い黄色の漆喰壁を眺めていると、下校する小学生の元気な声が遠くに聞こえ、情緒あふれる空気に包まれました。

伝統の灯を受け継ぐ和ろうそく

 かつて内子町が誇った「木蝋」とは、ハゼノキの果実から抽出した油でつくられた蝋の一種。口紅や石けんなど各種製品が木蝋から作り出されました。今も木蝋を使ってものづくりを続けている工房が一軒だけあると聞き、訪ねました。
 大きなろうそくの絵が描かれた暖簾をくぐると、「大森和蝋燭屋」の六代目・大森太郎さんと、七代目・亮太郎さんが和ろうそくをつくっていました。45~50℃に溶かした蝋を、なんと素手ですくって形作ります。
 店を切り盛りする太郎さんの妻、克子さんが「炎が大きく、風に強くて、独特の揺らぎがありますよ」と1本のろうそくに火を灯してくれました。木蝋を年輪のように丁寧に塗り重ねて作られた和ろうそく。その表情豊かな炎は、いつまでもうっとりと眺めていたくなるほど、優しく力強く揺らいでいました。

創業200余年。「大森和蝋燭屋」六代目の大森太郎さん

創業200余年。「大森和蝋燭屋」六代目の大森太郎さん

内子座に地元劇団

 内子ねき歩きのクライマックスに登場するのは、大正5年(1916年)に商家のだんな衆が地元の娯楽の場として建てた「内子座」です。
 創建100年を超える今も現役の芝居小屋で、木造2階建て茅葺入母屋造りの館内には回り舞台や升席も。公演のない日は、奈落といわれる地下の空間など舞台裏の仕掛けまで見ることができます。花道を歩くのも気分爽快。取材当日は、海外からの観光客が舞台ではっぴを着て写真を撮っていました。
 内子座は一見敷居の高そうな立派な劇場ですが、カラオケ大会や子どもの学芸会にも使用。町内には「劇団オーガンス」という地元劇団があり、オリジナル脚本で年に一度、20年間公演を続けています。
 「内子座は自分の家のような存在です。町のみんなが家族のようにこの場所に集まり、一緒に笑って時にはツッコミを入れて、年に一度のビッグイベントとして劇を作り上げています」と代表の徳田幸治さん。100年以上も地元の人に親しまれてきた内子座だからこそ、訪れた客に感動を与えてくれるのかもしれません。

「内子座」では花道を歩いたり、舞台に立ったり、奈落を見学することができる

「内子座」では花道を歩いたり、舞台に立ったり、奈落を見学することができる

熱意で復活 筏流し

 一級河川肱川の支流小田川では、毎年4月の第4日曜日に「川登川まつり・筏流し」が開かれています。小田川では江戸時代後期から、山で伐り出した木材を運ぶ筏流しの光景がよく見られていました。しかしトラックで木材を運ぶようになり筏流しは廃止に。45年ぶりに復活させようと、1993年に川登地区の住民が立ち上がったのです。
 「川登自治会筏保存部会」の部会長・高岡均さんは「子どもの頃はいつも川で遊び、生活と小田川が密接につながっていた。どこに岩があり、どんな急流があるのか、元筏師だった父は目をつむって筏を流すシミュレーションをしていたものです」と語ります。昔ながらの蓑と菅笠姿の筏師8人が、16棚につながった筏を巧みに操りながら川を下る景観は、実に見応えがあります。

川登自治会 筏保存部会のみなさん

川登自治会 筏保存部会のみなさん

“よそもの”目線で宝を発掘

 川登地区から小田川をさらに上流に向かって車を走らせると、過疎化の進む山間の集落にひときわ賑わいを見せる道の駅「小田の郷せせらぎ」があります。車を降りると小田川のせせらぎ音、山の澄んだ空気が清々しく迎えてくれます。
 ここで今話題を呼んでいるのは、「オダメイド」と名付けられたアイスクリームやコンフィチュール(ジャム)などの農産物加工商品。開発したのは2014年に地域おこし協力隊として移住し、任期終了後も定住した納堂邦弘さんです。
 「来たばかりの頃、小田はもったいないものに溢れていると感じました。見たことのない珍しい農産物、使われていない加工所やアイスクリームを作る機械など、地元の人にとっては当たり前の物でもよそから来た者から見ると価値があります。大勢の人に小田地区に足を運んでもらいたい」と納堂さん。
 昔は砂糖代わりに食べたという「はったい粉」や、甘みの強い「人参芋」を焼き芋にしてアイスクリームにするなど、納堂さんは100%小田産にこだわった商品開発に取り組みました。それらの素朴な風味が今、小田地区の誇りとなって訪れる人たちを喜ばせています。
 春には雪解け水と山里の桜が美しい内子町に、ぜひ足を運んでみてください。

のどかな里山の風景に溶け込む木造の屋根付き橋(内子フォトコンテスト実行委員会提供)

のどかな里山の風景に溶け込む木造の屋根付き橋(内子フォトコンテスト実行委員会提供)

「オダメイド」のアイスケースの前で納堂邦弘さん

「オダメイド」のアイスケースの前で納堂邦弘さん

■次回は千葉県白子町です。


まちのデータ

人口
1万6721人(2018年12月現在)
おすすめの特産品
ぶどう、桃、大洲和紙、和ろうそく
アクセス
松山空港から車で約60分、JR松山駅から電車で約25分
連絡先
内子町ビジターセンターA・runze
0893-44-3790

いつでも元気 2019.3 No.329

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